3次元地図から探る太陽系近傍の新たな姿
【2015年11月19日 Phys.Org】
「ヒッパルコス」は1989年に打ち上げられ1993年まで観測を続け、星々の位置や運動の高精度なデータをもたらしてくれた。「ヒッパルコスの観測データを元にした2次元の地図から、太陽系の近傍に関する理解や知識は大きく変わりました。しかし、2次元に投影した地図では、3次元宇宙のすべての特徴は表せません。見かけの構造が現れてしまったり、反対に重要な構造が隠れたりしてしまうかもしれないのです」(スペイン・宇宙生物学センター Hervé Bouyさん)。
「わたしたちは、太陽から約1500光年以内にあるOB型星(スペクトル型がOやBの星、オリオン座の三ツ星やリゲル、しし座レグルスなど)の3次元分布図を作りました。2次元で見たときとの違いが示され、高温星の分布に新たな構造があることや、OB型星がどのように形成されたのかがわかりました」(オーストリア・ウィーン大学 João Alvesさん)。
(左)天の川銀河の想像図、(右)太陽系近傍のOB型星の分布を示した3次元立体図(提供:ESA. Acknowledgement: H. Bouy (CSIC-INTA) & J. Alves (U. Vienna))
発表によると、太陽系の近傍には高密度の星団とOB型星がゆるく集まってできった3つの巨大な流れのような構造があるようだ。1つ目の構造は、さそり座からおおいぬ座まで達する1100光年以上にわたるもので、6500万年以上の星形成の歴史があるとみられている。ほ座にある2つ目の構造は500光年以上の範囲に広がっていて、その歴史は3000万年ほどと考えられる。
そして、オリオン座に位置する3つ目の構造が最も重要な意味を持つようだという。オリオン座にある、地球から250~800光年の距離に位置する5つのOB型星の起源はこれまで謎であり、約1300光年の距離にあるオリオン座大星雲「ではない」と考えられてきた。しかし3つ目の構造の発見によって答えが出た。遠く離れたこれらの星々は、実は1000光年以上の長さをもつ、2500万年の星形成史がある巨大な構造の一部らしいというのだ。
さらに研究チームでは、オリオン座の赤色超巨星であるベテルギウスにも言及している。「これまでベテルギウスの起源はよくわかっていませんでしたが、新たに発見したOBアソシエーション(OB型星のグループ)である「Taurion」で誕生したのだろうと思われます」(Bouyさん)。
また、これまで「グールド帯」として知られてきた構造が、実は幻影かもしれないという内容も発表された。グールド帯は長さ3000光年にわたる不完全な環状構造を持つOB型星の集まりだと思われてきたのだが、これは2次元に投影した結果表れた見せかけの構造というのだ。「グールド帯は、2次元投影が見るものをだますという、完璧な例なのです」(Alvesさん)。
今回の研究は、25年も前のヒッパルコスのデータが現在の技術を使うことにより恩恵をもたらしてくれること、そして3次元立体視の可能性をはっきりと示す結果となった。太陽系近傍の本当の姿を明らかにするには現在のモデルでは不十分で、形成から進化にいたるまで、まだ非常に多くのことを学ばなければならないようだ。
〈参照〉
- Phys.Org: 3-D visualisation redefines Milky Way's local architecture
- Astronomy & Astrophysics: Cosmography of OB stars in the solar neighbourhood 論文
〈関連リンク〉
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