中間質量ブラックホールの証拠?「おたまじゃくし」分子雲を発見

このエントリーをはてなブックマークに追加
天の川銀河の中心核近傍に孤立した「おたまじゃくし」形の分子雲が見つかった。その形状は太陽10万個分の質量のブラックホールによって作られた可能性がある。

【2023年2月22日 国立天文台野辺山宇宙電波観測所

私たちの天の川銀河の中心核である「いて座A*」は、太陽の400万倍の質量を持つブラックホールだと考えられている。他の銀河の多くでも、中心部に質量が太陽の100万~数億倍のブラックホールが潜んでいるとされる。こうした超大質量ブラックホールは、より小さな質量のブラックホールが合体を繰り返すことで形成されたという説があるものの、その途中段階で作られるであろう太陽の100~10万倍の中間質量ブラックホールは、確実な発見例がない。

慶應義塾大学の岡朋治さんたちの研究チームは天の川銀河の中心付近の分子雲を調べる過程で、2007年9月に約10万太陽質量のブラックホール候補を発見したと発表している。だが、その観測結果はブラックホール以外の天体でも説明できるため、決定的とは言えなかった。そこで岡さんたちはさらに有力な中間質量ブラックホールの候補を求め、米・ハワイのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡によるミリ波のサーベイ観測データを精査した。

その結果、いて座A*の北西約20光年の距離に、特異な形状をした分子雲が見つかった。分子雲は周囲から孤立して存在しており、立体的な構造を調べると、「おたまじゃくし」のような形であることがわかった。これは、太陽10万個分の質量を持つ点状重力源を回る運動で説明できるが、今のところ重力源の最有力候補と言えるのはブラックホールだ。

「おたまじゃくし」分子雲と中間質量ブラックホールの想像図
「おたまじゃくし」分子雲(左)と中間質量ブラックホール(中央)の想像図(提供:国立天文台野辺山宇宙電波観測所リリース、以下同)

「おたまじゃくし」が孤立しているということは、分子雲を変形させた要因が重力源以外に見当たらないことを意味する。その重力源はかなり狭い領域に集まっていて、様々な波長の光でその位置を調べても明るい天体が見つからない。以上のことから、研究チームは「おたまじゃくし」が太陽10万個分の質量を持つ中間質量ブラックホールによって形作られたと結論づけている。

今回見つかった天体は、分子ガスの分布や運動の解析から見つかった中間質量ブラックホールの候補としては、最も確度が高いという。

「おたまじゃくし」分子雲周辺
(a)いて座A*(十字印)周辺の一酸化炭素分子の回転スペクトル線の積分強度図(346GHz)。(b)「おたまじゃくし」周辺の拡大図。(c)(b)中の水色線に沿って作成した位置-速度図。(d)各速度におけるピーク強度位置(紫十字)とケプラー軌道(緑実線)を重ねた3次元図

この「おたまじゃくし」を駆動しているのが本当に中間質量ブラックホールだとすれば、その位置は超大質量ブラックホールのいて座A*から非常に近い。そのため、いて座A*に飲み込まれていく運命にあるとみられている。

今後研究チームは「おたまじゃくし」を形成する点状重力源の実体に迫るため、アルマ望遠鏡による高解像度観測を行う予定だ。

関連記事