「ウルティマ・トゥーレ」は「ウルティマ」と「トゥーレ」が合体してできた

このエントリーをはてなブックマークに追加
探査機「ニューホライズンズ」がフライバイ観測を行った太陽系外縁天体「ウルティマ・トゥーレ」について、その形成過程や地質学的特徴、組成などに関わる多くの情報が一連の初期データから明らかになった。

【2019年5月24日 NASA

今年1月1日、NASAの探査機「ニューホライズンズ」が、「ウルティマ・トゥーレ」の愛称で呼ばれている太陽系外縁天体2014 MU69をフライバイして観測を行った。その際に得られたデータの初期分析成果が、「サイエンス」誌上で発表された。特徴的な形が作られたプロセスや、表面の地形などについての考察が得られている。

米・科学誌「サイエンス」2019年5月17日号の表紙
初期データの分析結果が発表された米・科学誌「サイエンス」2019年5月17日号。ニューホライズンズの主任研究員を務めるAlan Sternさんの意向により、探査機の運用、ミッションの計画立案、探査機との通信を担当するチームなどに属する、総勢200人以上の人々の名が研究論文の共著者として連ねられることとなった(提供:AAAS/Science)

どのように作られたか

ウルティマ・トゥーレは、大きく平たい塊(仮に「ウルティマ」と呼ばれる)と小さく丸い塊(同じく「トゥーレ」)がくっついた接触型二重天体だ。数十億年前、ウルティマとトゥーレは互いの周りを回る連星で、軌道運動量の大部分を失ってゆるやかに衝突合体したものとみられる。運動量を失った要因については、当時まだ残っていた原始太陽系星雲のガスによる空気力学的なものか、あるいは当初はともに天体を形成していた別の塊を弾き飛ばして連星系の公転軌道が縮まった、などの可能性が考えられている。

また、ウルティマとトゥーレの形状軸の向きが揃っていることから、合体前に潮汐ロック(2つの天体の自転と公転周期が揃い、常に同じ面を向けている)状態となっていたこともうかがえるという。

ニューホライズンズ主任研究員のAlan Sternさんは、こうした新たな発見によって「太陽系形成に関わる理論に前進がもたらされることはまちがいない」と期待を述べている。

多様な地形

ウルティマ・トゥーレの地表に見つかった明るい点や斑模様、丘や地溝、クレーターといった様々な地形についての調査結果も発表されている。

トゥーレに見られる幅約8kmの大きなの窪みは「メリーランド・クレーター」という愛称がつけられ、天体衝突によって形成されたとみられる。その他の小さな窪みは、地表の陥没や氷の昇華などでできたもののようだ。

色と組成は、冥王星など他のカイパーベルトと類似しており、これまで探査が行われた外太陽系天体の中では最も赤い。赤い色味は、これまでに探査された他の凍った天体の多くとは大きく異なり、ウルティマ・トゥーレ上で存在証拠が得られているメタノールや水の氷や有機分子が混ざり合った物質の化学的な変化によるものではないかと考えられている。

現在ニューホライズンズは地球から約66億kmの彼方を時速約5万3000kmで航行し、カイパーベルトのさらに奥深い領域へ向かっている。ウルティマ・トゥーレの観測データの送信は2020年夏まで続く予定で、その間にも探査機は、他のカイパーベルト天体を遠方から観測して輝度の計測を行ったり、カイパーベルト内の荷電粒子の放射や塵の分布を調査したりする予定だ。

関連記事