ニューホライズンズ、ウルティマ・トゥーレを初検出

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NASAの探査機「ニューホライズンズ」が、次の目標であるカイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」の姿を初めてとらえた。最接近は約4か月後の2019年正月の予定だ。

【2018年8月31日 ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所

「ウルティマ・トゥーレ」(2014 MU69) は太陽から約65億kmの距離にあるカイパーベルト天体だ。2015年に冥王星探査を行った探査機「ニューホライズンズ」の次の目標天体で、NASAの愛称募集キャンペーンによって「最果ての地」を意味するこのニックネームが付けられた(参照:「ニューホライズンズの次の目標天体は「世界の果て」」)。正式な名前は探査の後に命名される。

今回の画像は8月16日にニューホライズンズの長焦点カメラ「LORRI」で撮影されたもので、合計48枚の画像データが数日かけてNASAの深宇宙ネットワークで受信された。

「撮影された画像の写野には背景の恒星が非常にたくさん写っていて、ウルティマ・トゥーレの淡い像を検出するのは難しいものでした。まさに『干し草の中から針を見つける』ような作業です。今回の画像では、ウルティマ・トゥーレは17倍も明るい恒星の横に飛び出た『こぶ』のようにしか見えません。これから探査機が接近していけば、もっと明るく写って見やすくなるでしょう」(ニューホライズンズミッション研究員、米・ジョンズ・ホプキンズ大学 Hal Weaverさん)。

ニューホライズンズが撮影したウルティマ・トゥーレ
2018年8月16日に「ニューホライズンズ」が撮影した「ウルティマ・トゥーレ」。探査機からの距離は1億7200万km。(左)長焦点カメラ「LORRI」で得られた30秒露出の画像を48枚合成したもの。中央の十字マークは事前に予測されたウルティマ・トゥーレの位置。(右)左の画像の枠内を拡大し、背景の恒星を減算した画像。画面中央の輝点がウルティマ・トゥーレ。ノイズ状の像は画像合成の位置ずれや変光のために減算後に残った恒星の像(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute)

今回の初検出は重要だ。これから4か月以上にわたって得られるウルティマ・トゥーレの観測データは、2019年1月1日12時33分(米東部標準時、日本時間1月2日午前2時33分)に予定されている最接近に向けて、運用チームが探査機の軌道を修正するのに役立つ。今回撮影されたウルティマ・トゥーレの位置は、ハッブル宇宙望遠鏡で観測したデータに基づいて予測していた位置と正確に一致していた。これによって、運用チームが現在把握しているウルティマ・トゥーレの軌道が正しいことがわかった。

ニューホライズンズのウルティマ・トゥーレへの接近飛行は、小さなカイパーベルト天体への接近探査としては世界初となる。また、太陽系天体の探査としても、2015年にニューホライズンズ自身が行った冥王星の探査(地球からの距離47億7000万km)を約18億kmも上回り、史上最遠の天体探査記録となる。

さらに、今回撮影された画像は、惑星探査機「ボイジャー1号」が1990年に撮影した地球の「ペイル・ブルー・ドット」画像の記録を塗り替え、「太陽から最も遠い場所で撮影された画像」の記録を更新するものだ。(「『地球から』最も遠い場所で撮影された画像」の記録は2017年12月にニューホライズンズが更新している。参照:「ニューホライズンズ、28年ぶりに史上最遠撮影記録を更新」

「このような遠い距離からLORRIでウルティマ・トゥーレを検出できるどうかを検証するため、運用チームでは懸命な作業を行いました。結果ははっきりイエスと言えるものでした。これまで考えていたよりもはるかに遠い距離からウルティマ・トゥーレの姿をとらえています。私たちは今やこの天体の『ドアの前』に立っていて、驚くべき探検が私たちを待っているのです」(ニューホライズンズ主任研究者、米・サウスウエスト研究所 Alan Sternさん)。

(文:中野太郎)

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