冥王星の雲、カロンの地滑り、赤い次の探査天体

このエントリーをはてなブックマークに追加
NASAの探査機「ニューホライズンズ」は次の探査天体「2014 MU69」を目指して飛行中だ。昨年取得された冥王星の探査データは間もなく全て送信完了の見込みで、分析中のデータから冥王星に雲らしきものが発見された。

【2016年10月19日 NASA

NASAの探査機「ニューホライズンズ」は現在、地球から55億km、冥王星からは5億4000万kmのところにあり、秒速14kmで太陽から遠ざかっている。昨年7月の冥王星最接近時に取得されたデータのうち約99%が地球に送信済みで、今月23日に全てのデータ送信が完了する。

ニューホライズンズの次のターゲットは、冥王星から16億km離れたところにあるカイパーベルト天体「2014 MU69」(以降、MU69)だ。ニューホライズンズは残り約10億kmの旅を経て、2019年1月1日にMU69を接近通過する予定となっている。そのMU69は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から表面が赤いらしいことがわかり、色が調べられた最小のカイパーベルト天体となった。

2014 MU69に接近するニューホライズンズの想像図
2014 MU69に接近するニューホライズンズの想像図(提供:NASA/JHUAPL/SwRI、以下同)

このデータはMU69が、太陽系内で最も古く始原的な物質を含んでいると考えられている、いわゆる冷たく古典的なカイパーベルト領域の天体かどうかを調べるのに用いられる。


冥王星の雲と思われるものについても研究報告がされている。複雑な層を成す冥王星の大気は、ぼんやりとかすんでおり、冥王星の上空にはほとんど雲がないように見える。しかし研究チームは、探査機がとらえた画像中に雲と思われるものをいくつか発見した。「もし雲が存在するならば、冥王星の気象が想像以上に複雑であることを意味します」(米・サウスウエスト研究所 Alen Sternさん)。

地平線上に見えるもや
地平線上に見える、約20もの層を成すもや


探査データからは、冥王星の表面の明るさが場所によって大きく異なることがあらためて確認され、さらに巨大なハート型の領域「トンボー領域」(非公式名称)が太陽系内で最も反射率が高い領域のうちの一つであることも示された。「表面の反射率が高く明るいほど、活動が活発なことを示しています。同様に反射率が高い準惑星「エリス」も、地表の活動が活発なのかもしれません」(NASAジェット推進研究所 Bonnie Burattiさん)。

多種多様な地質学的活動が見られる冥王星だが、地滑りは見つかっていない。しかし、冥王星最大の衛星「カロン」には存在している。「火星や、土星の衛星「イアペタス」では同様の地滑りが見られますが、カイパーベルト天体ではカロンにしか見つかっていません」(NASAエイムズ研究センター Ross Beyerさん)。

カロンに見られる地滑りの跡
カロンに見られる地滑りの跡

〈参照〉

〈関連リンク〉

関連記事