冥王星の地形に初の公式名称、「ハヤブサ大陸」など

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国際天文学連合が冥王星表面の14の地形について公式名称を承認し、小惑星探査機「はやぶさ」に因んだ「ハヤブサ大陸」などが採用された。

【2017年9月13日 IAUJAXAはやぶさ2プロジェクト

探査機「ニューホライズンズ」が2015年に冥王星をフライバイ(接近通過)した際に発見した地形のうち14個について、国際天文学連合(IAU)の惑星系命名ワーキンググループが公式の名称を承認した。これまでにも非公式な名称は使われてきていたが、公式な承認は今回が初めてのこととなる。

名称はニューホライズンズのチームと公募キャンペーン「Our Pluto」に参加した一般市民によって提案されたもので、宇宙探査ミッション、歴史的探検家、冥王星やカイパーベルトに関わる科学者や技術者、神話に因むものとなっている(参照:「冥王星と衛星の地名のテーマが公式決定」)。

「冥王星や宇宙探査、冥界などに深い意味や重要性を持つ人々の価値を認める名称の承認は、とても楽しいものでした。これらの名前は、発見の最前線へ突き進むことの重要性を強調していると言えます。名称候補の提供という形で貢献してくださった一般の方々と、名称を提案してくれたニューホライズンズ・チームに感謝します」(IAUワーキンググループ Rita Schulzさん)。

「承認された名称は、これまでに探査された中で最も遠い世界である冥王星とカイパーベルトの歴史的探査への道を拓いた、多くの人々とさまざまな宇宙探査ミッションを称えるものです」(ニューホライズンズ主任研究員 Alan Sternさん)。

IAUによって承認された冥王星表面の14の地形の名称とその由来

冥王星表面の地形の名称
正式に承認された冥王星表面の14の地形の名称。クリックで画像拡大(提供:NASA/JHUAPL/SwRI/Ross Beyer)

※読み方や地形の訳語はアストロアーツによる。

  • 「トンボー領域(Tombaugh Regio)」:アメリカの天文学者クライド・トンボー(1906-1997)。1930年に米・アリゾナ州ローウェル天文台で冥王星を発見
  • 「バーニー・クレーター(Burney crater)」:イギリスのヴェネチア・バーニー(1918-2009)。トンボーが発見した天体に「冥王星」という名前を提案。当時11歳だった
  • 「スプートニク平原(Sputnik Planitia)」:ソビエト連邦の人工衛星「スプートニク1号」。1957年に打ち上げられた世界初の人工衛星
  • 「テンジン山とヒラリー山(Tenzing Montes and Hillary Montes)」:インド・ネパールのシェルパのテンジン・ノルゲイ(1914-1986)と、ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリー(1919-2008)。世界初のエベレスト登頂に成功
  • 「アル・イドリーシー山(Al-Idrisi Montes)」:アラブの地図学者・地理学者アル・イドリーシー(1100-1165/66)。アジア・アフリカ・ヨーロッパ域の地図や解説本を作成
  • 「ジャンガウル地溝帯(Djanggawul Fossae)」:オーストラリア先住民の神話に登場する3人の先祖「ジャンガウル」。死の島とオーストラリア間を旅し、大地を創り草木で覆いつくしたとされる
  • 「スレイプニル地溝帯(Sleipnir Fossa)」:北欧神話の馬「スレイプニル」。強力な8本の脚を持ち、主神オーディンを冥界に運んだ
  • 「ヴァージル地溝帯(Virgil Fossae)」:ローマの詩人ヴァージル(ウェルギリウス、紀元前70-紀元前19)。ダンテの叙事詩「神曲」で、地獄や煉獄を巡るダンテの案内役となった
  • 「アドリヴン凹地(Adlivun Cavus)」:イヌイット神話に登場する冥界「アドリヴン」
  • 「ハヤブサ大陸(Hayabusa Terra)」:日本の探査機および探査計画「はやぶさ」。2003年に打ち上げられ、人類史上初めて小惑星の直接サンプルを採取し、2010年に地球に持ち帰った
  • 「ボイジャー大陸(Voyager Terra)」:NASAの探査機「ボイジャー1号・2号」。1977年に打ち上げられ、木星、土星、天王星、海王星を探査。現在も運用が続けられており、太陽圏と恒星間空間との境を調べている
  • 「タルタロス尾根(Tartarus Dorsa)」:ギリシャ神話に登場する、最も深く暗い冥界の穴「タルタロス」
  • 「エリオット・クレーター(Elliot crater)」:アメリカの研究者ジェームズ・エリオット(1943-2011)。星食を太陽系研究に利用した先駆者で、天王星の環を発見し、冥王星の薄い大気を世界で初めて検出した

なお、クジラ模様として知られる暗い領域「クトゥルフ領域」は、(少なくとも今回は)正式名として承認されていない。今後も引き続き、冥王星の他の地形や「カロン」をはじめとする衛星の地形に正式名称がつけられていくことになる。

ニューホライズンズは現在、次の目的地に向かって旅を続けており、冥王星よりさらに16億km外側にあるカイパーベルト天体「2014 MU69」に2019年1月1日に最接近する(参照:「ニューホライズンズ、次の目標はカイパーベルト天体2014 MU69」)。

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