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流星観測のすすめ 写真編

写真観測のポイント

◎特徴・利点
眼視よりも客観的な記録方法である
出現経路から放射点を求めるのに適している
インターバル撮影ができれば大量の撮影が楽
×欠点
暗い流星の捕捉は、まだまだ苦手
機材やフィルム代などコストがかかる
観測目的によってはビデオのほうが有利

写真観測の最大の利点は、記録に客観性があるということだ。とくに赤道儀を用いたガイド撮影なら、恒星が点像に写り、流星の出現経路をより正確に記録できる。単に火球が写った写真を得るだけでなく、きちんと記録をとることが観測の基本だ。火球観測報告フォーマットも用意しておき、撮影中にもし火球が写野に飛び込んだら、これに記入して正確な記録を残しておこう。

写真観測といっても、一般的な固定撮影やガイド撮影で星野を撮影する方法とそう変わらない。カメラは数分間の露出ができる機種であれば、フィルムカメラ、デジタルカメラのどちらでも使える。レンズ交換式の場合は、撮影レンズは広角系の、なるべくF値の小さな明るいレンズを用い、絞りは開放付近で使用すると、流星が写りやすく有利だ。レンズを交換できない場合、例えばズームレンズつきのデジタルカメラなどの場合は、ズームを最も広角側にすることで小さなF値となるものもある。このほか、リモコン(またはレリーズ)、カメラ三脚は必須だ。他に用意しておきたいものとしては、レンズフード、レンズの夜露付着対策のカイロ、時計、懐中電灯、ノート、筆記用具、予備のフィルムやメモリーカード、予備バッテリなど。

フィルム(デジタルの場合は撮影感度)は、ISO800以上がよいだろう。絞りを開放付近にし、5分間くらいの露出で撮影を繰り返し、写野に流星が流れるのをひたすら祈る。光害などで空の背景の明るさが気になるようなら、露出時間を短めにして、せっかく写った流星が空の背景の明るさに埋もれてしまうことのないよう気をつけよう。露出時間が長すぎないかどうかは、デジタルカメラの場合は画像を再生してすぐに確認できるが、フィルムの場合はできれば事前に撮影地で同条件のテスト撮影をしておきたい。

デジタルカメラでは、フィルムのような相反則不軌特性がないので、わずか数分間の露出でも光害の影響を受けて画像が真っ白になってしまうことがある。露出は短めに切り上げて、その代わり多くの枚数を効率よく撮影する工夫をしたい。天体撮影でよく使われるRAWモードでの記録を諦めてJPEGモードを選択したり、タイマーコントローラやパソコンと接続してコントロールできる機能があれば活用したい。また、ノイズリダクションをオフにして連続撮影を優先するなど、効率よく撮影を続けるための設定を予めよく知っておきたい。また、予備のバッテリやメモリカードも忘れずに用意しておこう。

流星は空のどこに出現するかわからない。流星が写りやすい方向というものは特にないのだが、放射点近くに狙いを定めると、複数の流星が写ったときに、一点から飛び出してくるイメージが湧きやすい写真になるだろう。

撮影機材 赤道儀で星の日周運動を追うガイド撮影なら、恒星が点像に写り、流星の軌道と放射点の検出ができる。流星の出現時刻の記録を忘れずに。

固定撮影による火球 ガイド撮影による火球 ペルセウス座流星群の火球

左:固定撮影

28mmF2.8開放 ISO800
露出9分50秒
1996年8月13/14日
佐藤孝悦氏撮影

右:ガイド撮影
35mmF2開放 ISO800
露出4分30秒
1996年8月12/13日
佐藤孝悦氏撮影

流星痕撮影のポイント

  • F2.8以上の明るい標準〜望遠レンズに、ISO1600のカラーフィルムを使用し、10秒程度の露出時間を目安に、連続撮影を行う。
  • 火球光度、出現時刻、撮影時刻(共に秒まで)、出現座標(星座名、星名など)を正確に記録する。
  • 目で見えなくなっても淡い光が残っていることがあるので、消えたと思っても数枚撮影し続ける。
  • 月の近くに出現しても、特に望遠レンズでは、画角内に月が入らない限り流星痕の撮影に大きな支障はない。
  • 報告は「流星痕同時観測キャンペーン事務局」へ。

流星痕とは、明るい流星に伴って出現するプラズマ雲だ。ペルセウス座流星群は流星痕が出現しやすいことが知られているが、実は鮮明な撮影例が非常に少ない。もし観測が成功すれば、大変に貴重なデータとなる。流星痕は淡く、動きも速い。本気で狙うなら流星痕撮影用にカメラを用意して臨みたい。

流星痕撮影用カメラ

流星痕の写真 50mmF1.4開放 ISO3200 露出10秒
1994年8月13日1時42分
山本真行氏撮影

火球観測報告フォーマット記入例 (日本流星研究会による形式)
1.報告者名:比嘉義裕
2.報告者連絡先住所:***県***市
3.報告者メールアドレス:***@***.ne.jp
4.観測者名:比嘉義裕
5.同上ローマ字表記:HIGA Yoshihiro
6.観測地市町村名:***県***市
7.観測地経度緯度標高:E:***d****" N:**d**' **" H:**m
8.観測方法:眼視
9.観測日時:2004年8月12日 03h13m20±5s(JST)
10.発光/発見の別(註1):発光
11.発光/発見位置:And
12.消滅/見失の別(註2):消滅
13.消滅/見失位置:Peg
14.光度:−5
15.群の帰属:Per
16.継続時間:0.5s
17.:有(15秒)
18.:白
19.:無
20.備考:途中で爆発増光した
21.日本流星研究会へのデータ転送の可否:可
  • 註1:「発光」光り始めを見た、「発見」光り始めを見ていない
  • 註2:「消滅」光り終わりを見た、「見失」光り終わりを見ていない

送付先 日本流星研究会火球観測部門

Eメール fireball@nms.gr.jp

郵送の場合 〒673-0882 明石市相生町2丁目2-7-404
        日本流星研究会・火球観測担当幹事 司馬康生

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