ガンマ線と可視光線偏光の同時観測で迫る光速ジェット

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ガンマ線バースト「GRB 180720B」のガンマ線と可視光線偏光の同時観測から、衝撃波中の磁場構造などが明らかになった。ガンマ線バーストの光速ジェットの加速の解明につながる重要な成果だ。

【2023年12月1日 東京大学宇宙線研究所

ガンマ線バーストは数秒から数百秒の間に爆発的にガンマ線が放たれる、宇宙で最も明るい爆発現象だ。太陽よりもずっと大質量の星が自身の重力で潰れて崩壊しブラックホールが生まれる瞬間、光速に近いプラズマのジェットが噴出して衝撃波が形成される。この衝撃波中で高エネルギー粒子が加速され、磁場と相互作用してガンマ線を放射すると考えられている。 しかし、ガンマ線バーストのジェットがどのようにして光速近くまで加速されるのか、衝撃波の内部にどのような磁場が形成されることでガンマ線が生まれるのかは、よくわかっていなかった。

ガンマ線バーストのイメージ図
ガンマ線バーストのイメージ図(提供:2023金沢大学、イラスト制作:武重隆之介・髙橋壮一、以下同)

2018年7月20日、NASAの天文衛星「フェルミ」と「ニール・ゲーレルス・スウィフト」が、うお座の方向の61億光年彼方で発生したガンマ線バースト「GRB 180720B」を検出した。その位置情報などのアラートを受けて、東広島天文台「かなた望遠鏡」はバースト発生の80秒後という極めて早いタイミングでガンマ線バーストからの可視光線放射をとらえた。

観測データを解析したところ、光速に近い速度で噴き出すジェット内部に進行方向と反対方向に進む衝撃波が発生し、そこから可視光線やガンマ線が強く出ていたことがわかった。

かなた望遠鏡では偏光も観測可能で、高エネルギーガンマ線と可視光線偏光の同時観測に成功したのは今回が初めてだ。その偏光の情報から、逆方向に進む衝撃波の中の磁場構造が「トロイダル磁場」と呼ばれるドーナツ型のものであることや、磁場の向きがきれいに揃っておらず非常に乱れた構造をしていることがわかった。逆方向に進む衝撃波はガンマ線バーストのジェット内部の情報を持っていて、光速ジェットの起源に関する手がかりとなる。

さらに、逆方向の衝撃波放射が終わった後、ジェットの進行方向と同じ向きに進む衝撃波からもガンマ線が観測された。この衝撃波の磁場構造はドーナツ型ではなく放射状の構造を持っていて、2種類の衝撃波でまったく異なる磁場構造をしていることが示された。

ガンマ線バーストのイメージ図
ガンマ線生成メカニズムなどを記載したガンマ線バーストのイメージ図

ジェットを光速近くまで加速する機構の一つとして、ブラックホールの回転エネルギーによる「磁場駆動モデル」が提案されている。このモデルでは、ブラックホールの回転によって磁場がねじれ、ジェットの内部にドーナツ型の磁場が作られることが予言されていた。今回明らかになった逆方向に進む衝撃波中のドーナツ型の磁場は、このモデルを支持するもので、爆発的エネルギーを生み出すジェットの謎を解明する大きな一助となる。また、衝撃波の内部でガンマ線を生み出す粒子を高いエネルギーまで効率良く加速するには磁場の乱流が必要だとする従来のアイディアに対しても、磁場乱流が観測された意義は大きい。

今回の研究成果は、磁場を直接観測できる偏光観測の重要性を示し、理論モデルの妥当性を示す直接的な証拠の一つとなった。銀河など様々な天体で観測されている多くのジェットの謎の解明にも、本成果が繋がる可能性がある。

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