金属小惑星を目指す探査機「サイキ」打ち上げ成功

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日本時間13日深夜、探査機「サイキ」が打ち上げられ、金属が豊富な小惑星「プシケ」を目指す6年の旅を開始した。

【2023年10月16日 NASA JPL

日本時間10月13日23時19分、NASAの小惑星探査機「サイキ(Psyche)」を搭載したファルコンヘビーロケットが米・フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。探査機はロケットから正常に分離され、打ち上げの約1時間半後に探査機と地上局との間で通信が確立され、打ち上げは成功した。

探査機サイキの打ち上げ
探査機サイキの打ち上げ(提供:NASA/Aubrey Gemignani)

サイキは火星と木星の公転軌道の間にある小惑星帯に位置する小惑星「プシケ((16) Psyche)」に、2029年8月に到着する予定だ。その後、少なくとも2031年11月まで26か月間にわたって探査を行う。

プシケを探査するサイキの想像図
プシケを探査するサイキの想像図(提供:NASA/JPL-Caltech)

プシケは最大幅が280kmほどの大型小惑星で、「はやぶさ2」が探査を行った小惑星リュウグウの約250倍も大きい。M型小惑星に分類され、表面には岩石や氷ではなく大量の金属が含まれている。また、酸化鉄があまり見られないことから、プシケの歴史は標準的な惑星形成の物語とは異なっていると考えられている。こうした特徴を持つ小惑星を探査機が訪れるのは史上初となる。

太陽系ができて間もないころ、天体同士の衝突・合体により天体は大きく成長していった。同時に、衝突によって外側の岩石質の殻が引きはがされ、内部の金属核のみが残ったような天体も生じたはずだ。金属を豊富に含むプシケのような小天体は、そのような金属の核のみが残った残骸の一つかもしれない。

サイキはプシケを周回しながら、惑星形成初期の痕跡である磁場の有無を調べる。もし、小惑星としては初となる磁場が検出されれば、プシケが地球の中心にあるような金属核の一部または全部であると考え得る証拠となる。そうなれば、これまでは見ることができなかった岩石質の惑星内部を調べる初めての機会になり、地球をはじめとする岩石惑星の形成の解明につながる知見が得られると期待される。

プシケの想像図
プシケの想像図(提供:NASA/JPL-Caltech/ASU)

あるいは、プシケは太陽系内のどこかで金属に富む物質から形成された、別の種類の金属に富む天体の残骸という可能性もある。その場合、プシケは今までに見たことのない種類の太陽系始原天体ということになる。サイキは中性子やガンマ線を観測し、プシケの元素組成も調べる。

また、サイキでは「ホールスラスター」という推進機構が用いられている。ホールスラスターはエネルギー変換効率が50%以上と高く、人工衛星などでも使われているが、サイキは月軌道を超えた深宇宙でホールスラスターを使用するNASA初のミッションだ。

「金属が豊富な小惑星を目指す史上初の旅へ向かう探査機の打ち上げ成功に際し、ミッションチームにお祝いを申し上げたい。サイキは、将来NASAのミッションで使用する技術をテストしながら、惑星形成に関する新たな情報を人類に提供してくれることになるかもしれません。『未知なるものの探査から得られる発見を通じて、世界中にインスピレーションを与える』というNASAの取り組みは続きます」(NASA長官 Bill Nelsonさん)。

サイキの打ち上げ中継録画「Psyche Launches to a Metal Asteroid」(提供:NASA)

※アストロアーツ注:Psycheのカタカナでの表記について、探査機名は英語の発音に近い「サイキ」、小惑星名はラテン語由来の「プシケ」とします(将来変更する可能性があります)。カナ表記については知名度等を元に個々の事例ごとに判断しており、必ずしも統一的な基準に沿っているとは限りません(正しさを保証するものでも主張するものでもありません)。

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