ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初成果

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NASAは、調整が完了したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による初めてのフルカラー画像などの成果を発表した。

【2022年7月14日 NASA

NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は昨年12月25日の打ち上げ後、その性能がフルに発揮できるように半年間にわたって展開と調整が続けられてきた。7月12日、最初のフルカラー画像(赤外線観測データをもとにした擬似カラー画像)および分光観測データが公開された。

「本日、人類がこれまでに見たことのない、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による画期的で新しい宇宙の景色を披露いたします。これまで撮られた中で最も深い宇宙の眺めを含むこれらの画像は、私たちがどのように問えばよいかすらわかってない疑問にウェッブがどう答えてくれるかを示しています。その疑問を通じて、私たちは宇宙およびその中の人類の居場所についてよりよく理解できるでしょう」(NASA長官 Bill Nelsonさん)。

銀河団「SMACS 0723」

とびうお座の方向46億光年彼方の銀河団「SMACS 0723」は、他の画像に先立つ7月11日に米国大統領ジョー・バイデンの会見で発表された。JWSTの先輩ともいえるハッブル宇宙望遠鏡はいくつもの「ディープ・フィールド」、すなわち遠方銀河や銀河団が散らばる深宇宙領域を撮影し、画像として公開してきたが、SMACS 0723の画像はJWSTにとって最初のディープ・フィールドと言えるかもしれない。

JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)が複数の波長で12時間半かけて撮影したこの画像では、莫大な質量を持つSMACS 0723の重力が光を曲げるレンズの役割を果たし、遠方の銀河が弧状に歪められ拡大されて写っている。一番遠い銀河の姿は約131億年も前のものだ。

SMACS 0723
銀河団SMACS 0723。画像クリックで表示拡大(提供:NASA, ESA, CSA, STScI、以下同)

惑星状星雲「南の環状星雲」

「南の環状(リング)星雲」の愛称がある惑星状星雲NGC 3132。ほ座の方向約2500光年の距離に位置する。

NGC 3132
南の環状星雲NGC 3132。(左)赤外線カメラ(NIRCam)、(右)中間赤外線カメラ(MIRI)。画像クリックで表示拡大

ηカリーナ星雲の「宇宙の崖」

まるで峡谷のようなこの画像では、一番高い「峰」は高さ約7光年もある。写っているのは、りゅうこつ座の方向7600光年の距離にあるηカリーナ星雲(NGC 3372)の北西端に位置する、若い星形成領域NGC 3324の端だ。この星形成領域で生まれた若い星からの強烈な紫外線と恒星風が、画像上部から下部へ向かってガスと塵を削り出し、この形状を作り出した。

宇宙の崖
宇宙の崖。画像クリックで表示拡大

銀河群「ステファンの五つ子」

ペガスス座の方向にある銀河群「ステファンの五つ子(HCG 92)」は、今のところJWSTの撮影画像としては最大のものだ。満月の約5分の1の天域をカバーしており、画素数は1億5000万以上で、約1000個の画像ファイルをつなぎ合わせたモザイク画像である。

「ステファンの五つ子」のうち実際に隣り合っているのは4つ(NGC 7317, NGC 7318A, NGC 7318B, NGC 7319)で、地球からは約2億9000万光年離れている。NGC 7320(一番左)だけは約4000万光年の距離にある。いずれにしても、数十億光年も離れた遠方銀河に比べればずっと近くにあるので、詳細に観測して銀河全般への理解を深めるのに向いているターゲットだ。

ステファンの五つ子
ステファンの五つ子。画像クリックで表示拡大

系外惑星「WASP-96 b」の大気

JWSTは系外惑星の研究者にとっても夢の装置だ。今回公開された、ほうおう座の方向約1150光年の距離にある系外惑星「WASP-96 b」の観測データには、系外惑星観測装置としてのJWSTの能力が表れている。

WASP-96 bの質量は木星の半分以下だが、直径は1.2倍で、中心星からは太陽・水星間距離のわずか9分の1という至近距離を公転している。この惑星を中心星から分離してとらえることはJWSTといえどもできないが、恒星の前を横切ることで引き起こす減光は検出できる。WASP-96 bが近赤外線の各波長をどれだけ遮ったかを示すのが、以下のグラフだ。一部の波長が顕著に減光されているのは、惑星の大気に含まれる成分によって吸収されるからである。JWSTはWASP-96 bで水蒸気による吸収が多いことを初めて示した。

WASP-96 bにおける水の存在証拠
系外惑星WASP-96 bのスペクトルから示された水の存在証拠。画像クリックで表示拡大