ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、打ち上げ成功

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次世代の赤外線観測装置であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が25日にギアナ宇宙センターから打ち上げられ、半年後の観測開始に向けて宇宙での準備が始まった。

【2021年12月27日 NASA

史上最大の宇宙望遠鏡であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)が日本時間の12月25日21時20分、仏領ギアナのギアナ宇宙センターからアリアン5型ロケットで打ち上げられた。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げ
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げ(提供:NASA James Webb Space Telescope Launch - Official NASA Broadcast

打ち上げから27分後、JWSTは高度約1400kmの宇宙空間でロケットから分離された。その数分後にはJWSTが太陽電池パネルを展開して発電を開始したことが確認されている。

ロケットから切り離されたJWST
ロケットから切り離された直後のJWST(提供:NASA)

この後JWSTはスラスター噴射で軌道を調整し、1月の終わりには地球から約150万km離れたラグランジュ点のL2に到着する。L2は地球を挟んで太陽の反対にある、衛星が安定してとどまり続けることができるポイントだ。

JWSTの軌道
JWSTはL2の周囲を動く軌道を取る。天体の距離や大きさの比は実際とは異なる(提供:NASA)

L2までの道中でJWSTはサンシールドや主鏡を展開する。長さ21m、幅14mの大きさのサンシールドは、極低温を要する観測装置を太陽や地球の熱から守るためのもので、5枚が重なっている。直径6.5mの主鏡は18枚の鏡が組み合わさってできているが、そのままではロケットに格納できないため両側が折りたたまれている。

JWSTは赤外線を観測する望遠鏡だが、赤外線は私たちに身近な温度の物体であれば必ず放射する電磁波だ。そのためJWSTの観測装置は、赤外線を出さない極低温(-266~-233℃)まで冷やす必要がある。JWSTには冷却用ヘリウムが搭載されていて、サンシールドと望遠鏡の展開が終われば冷却を開始する予定だ。

観測装置の作動開始は打ち上げの約3か月後で、科学観測のスタートは2022年夏ごろと見込まれている。

JWSTの展開シーケンス(太陽電池パネルから主鏡まで)のアニメーション動画「James Webb Space Telescope Deployment Sequence(Nominal)」(提供:Music Credit: Universal Production Music "Connecting Ideas Instrumental"、Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)

JWSTは、可視光線の一部と近・中赤外線を含む波長0.6~28.5μmの光をとらえることができる。その解像度はハッブル宇宙望遠鏡の100倍で、月面上の1匹の蜂から発せられる熱を地上から検出するできるほどに相当する。遠くは135億光年以上先までとらえて、宇宙第1世代の銀河や恒星に迫ることを目指し、近くは太陽系内外の惑星を観測して、生命に適した環境や生命の痕跡そのものを見つけるのが目標だ。

「打ち上げは重要な瞬間ですが、始まりにすぎません。私たちは今後迎える、待望の、しかし重要で綱渡りするような29日間を見守ります。折りたたまれていた船体が宇宙で広がるとき、JWSTは宇宙開発史上最も困難で複雑な展開シーケンスを経験することになります。運用が始まれば、私たちは想像力をかき立てる畏敬の念さえ抱くほどの画像を見るでしょう」(JWSTプログラムディレクター Gregory L. Robinsonさん)。

JWSTの打ち上げ中継の録画「James Webb Space Telescope Launch - Official NASA Broadcast」(提供:NASA)}