発見から6か月、増減光を繰り返すカシオペヤ座新星

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今年3月に中村祐二さんが発見したカシオペヤ座の新星が、半年経った現在も明るい状態で6~8等前後の増減光を繰り返している。

【2021年9月22日 高橋進さん】

2021年3月18日に三重県の中村祐二さんによって発見されたカシオペヤ座新星2021(カシオペヤ座V1405、V1405 Cas)は、出現から半年が経ちますが、いわゆる「遅い新星」として、明るい状態で増減光を繰り返しています。

発見時の等級は約9.6等でしたが、その後1か月あまり7等台を推移した後、5月初旬に突然5等台になりました(参照:「カシオペヤ座の新星が5等級に増光中」)。久しぶりの肉眼新星と言われましたが、その後も増減光を繰り返して6等と8等の間を激しく変化しています。

カシオペヤ座V1405の光度曲線
カシオペヤ座V1405の光度曲線。画像クリックで表示拡大(提供:高橋さん。日本変光星観測者連盟のデータより作成)

通常の新星は出現後の数日くらいで極大を迎え、その後にゆっくりと減光していきます。早い新星では1日に1等級くらいのスピードで暗くなっていきます。しかし今回のカシオペヤ座新星は一般的な新星とは異なり、極大期の光度で何度もの増減光を繰り返しています。こうした新星は遅い新星と呼ばれ、有名なものとして1995年に山本稔さんが発見したカシオペヤ座新星1995(V723 Cas)があります。この新星は出現から3か月以上経ってからおよそ7等の極大になり、その後は1等級暗くなるのに1年近くかかるというゆっくりとした減光を見せました。

このように新星の光度変化がいろいろと異なるのは、新星爆発した星の質量の違いによると考えられています。

新星とは白色矮星と主系列星の近接連星で起こります。主系列星から白色矮星に向かって水素ガスが降り込んでいき、白色矮星の表面にたまった水素が急激な核反応爆発を起こすのが新星現象です。この時に白色矮星の質量が重い場合は新星爆発も激しく、周囲のガスも吹き飛ばされてしまいます。そして爆発後、温度が下がるにつれて減光していきます。ところが白色矮星の質量が軽い場合は新星爆発が弱く、白色矮星の周囲に残ったガスのせいで増減光が起こり、遅い新星になるとみられています。

今回のカシオペヤ座新星(V1405 Cas)もしばらくは増減光を繰り返しながら、ゆっくりと減光していくと思われます。当面は双眼鏡や小さな天体望遠鏡でも観測が可能な明るさです。カシオペヤ座が見やすい季節ですので、この機会に新星の光度変化をぜひお楽しみください。

カシオペヤ座V1405の位置
カシオペヤ座V1405の位置。円内の数字は周囲の星の等級(56は5.6等級の意味)。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

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