山本さん、たて座に共生新星を発見

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愛知県の山本稔さんが3月に発見したたて座の新天体が、共生新星というタイプの新星であることが分光観測で確認された。

【2022年10月13日 VSOLJニュース

著者:田口健太さん(京都大学)

2022年はこれまで、日本から観測可能な明るい新星は6月に増光した再帰新星のさそり座Uしか見つかっていませんでしたが、注目に値する天体が9月に確認されました。元々ミラ型変光星として知られていたGDS J1830235-135539(2MASS J18302347-1355421)という天体で、2021年4月ごろから共生新星という現象が発生しているようです。

この天体が明るくなっていることに最初に気づいたのは、愛知県岡崎市の山本稔さんです。今年3月に増光を発見し、変光星観測者のメーリングリストやご自身のブログなどで報告されました。元々はBochum Galactic Disk Survey(GDS)で発見された変光星であり、今回の新星爆発以前も約1年ごとの周期で増減光を繰り返していたことが確認されています。しかし今回の増光は、この周期よりも長い時間をかけていることや、とくに青い波長帯では過去の増減光の変光範囲を超えて明るくなっていたことから、ミラ型変光星としての増光とは異なる現象が発生している可能性が示唆されていました。

9月30日の画像
9月30日の観測画像(撮影:山本さん

これを受けて9月20.43日(世界時、日本時では19時20分ごろ) に京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡で分光観測が行われました。その結果、中性水素のバルマー系列の強い輝線や、中性のヘリウム・酸素や1階電離した鉄の輝線が検出され、この増光現象が共生新星であることが確認されました。この天体の座標は以下のとおりです。

赤経  18h30m23.466s
赤緯 -13°55′42.17″(2000年分点)

たて座の新星の位置
たて座の新星の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

長崎県の森山雅行さんの9月29日の観測によると、明るさは12.3等でした。今後の明るさの変化などが注目されます。

共生新星(共生星新星、symbiotic nova)とは、白色矮星と赤色巨星からなる連星系(共生星)で発生する現象です。物理的には通常の新星と同じく、伴星から白色矮星表面に降着した物質が爆発的な原子核反応を起こして発生すると考えられています。今回の場合、元々ミラ型変光星として知られていた赤色巨星が、実は白色矮星との連星系であり、現在は白色矮星の方が新星爆発によって赤色巨星よりも明るくなってしまったものとみられます。

共生新星の一部には進化が極めて緩やかなものがあります。本田実さんと桑野義之さんが1978-1979年に発見したこぎつね座PUや、和久田実さんが1994年に発見したいて座V4368は、発見から30~40年が過ぎた現在も約13等(Vバンド)ですし、1964年に発見されたはくちょう座V1016は現在も約12等です。山本さんが発見した今回の天体も、現在までの増光が緩やかなことから、今後も10年以上にわたって観測可能と予想されます。

これら一部の共生新星の進化が緩やかなことは、物理的には白色矮星の質量が軽いことと関係していると考えられています。再帰新星(反復新星)として有名なへびつかい座RSやかんむり座Tも実は共生星ですが、白色矮星の質量はずっと重いと考えられています。