新型コロナウイルスに負けず星空を届ける

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今回の新型コロナウイルスによる感染症の拡大は、歴史的な出来事となってしまいました。天文業界、特に教育や普及に関わる人々は、この新型コロナウイルスに対してどのように立ち向かっているのでしょうか。

【2020年6月5日 高梨直紘(天文学普及プロジェクト「天プラ」)】

3月以降、全国各地で天文関係のイベントの中止が相次ぎました。公共天文台やプラネタリウムなどの施設も公開を取りやめ、5月中旬時点では足を運べる施設はほとんどありませんでした。

しかしイベントの主催者や各施設の担当者たちが手をこまねいているわけではありません。さまざまなサービスを活用して、いち早くオンラインでの活動を始めた事例がたくさんあります。また、以前からこういったオンラインでの活動に取り組んできた施設や団体も少なくありません。新型コロナウイルスとはまったく異なる理由から新しいチャレンジをしてきたことが今、大いに役立っていると言えるでしょう。

南阿蘇ルナ天文台
熊本県の南阿蘇ルナ天文台では、YouTubeLiveを利用した天体観望会の中継の経験を活かして、新型コロナウイルスによる休業期間中にも途切れることなく星空解説のライブ配信を行っています(提供:南阿蘇ルナ天文台)

新しい時代の息吹を感じる活動もたくさんあります。Oculus Riftのようなヘッドマウントディスプレイを使ったVRの世界には、宇宙系のコンテンツが目白押し。宇宙系YouTuberたちによる番組配信や、宇宙物理たんbotのようなVTuberの活躍も光ります。気になった方は、まずは検索あるのみです。

天文仮想研究所
VRにソーシャルの要素を加えたアプリ「VRChat」では、VR天体コミュニティ「天文仮想研究所VSP」の皆さんが中心となってみんなで宇宙や星空を楽しめるワールドが展開されています(提供:天文仮想研究所VSP)

勇気づけられるのは、こういった活動がTwitterやFacebookなどのSNSを通じて、多くの人たちの手によって素早く拡散されていることです。どんどん参加して、どんどん楽しみましょう!私たちがそういったイベントや試みに参加して楽しむことが彼らの励みとなり、それが次なる活動を生むことにつながるはずです。

今回の新型コロナウイルス禍がいつ完全に終息するのか、それはまだ誰にもわかりませんが、5月末に緊急事態宣言が解除されたことを受け、科学館やプラネタリウムでは、感染防止策を講じたうえで徐々に再開の動きが出ています。とはいえ無数にあるリスクに対して、どのような対策をどの程度すれば十分と言えるのか。限られた予算や人手をやり繰りしながら、妥当な解を探すことは簡単ではありません。

しかし、この厳しい状況だからこそ、新しいアイディアが生まれるチャンスがあります。そういった創意工夫は、新型コロナウイルスが去った後にも、私たちの財産として残されるはずです。星空の楽しみをより豊かなものにしていけるかどうかは、私たち次第だと考えて、みんなでがんばりましょう!

※2020年5月半ば執筆の内容に加筆・修正。星ナビ7月号にて、さらに詳しい記事を掲載しています。

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