太陽が2つある惑星の回り方

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これまでに行われた系外惑星の捜索では、2つの恒星からなる連星系の中でも惑星が見つかっているが、いずれも惑星の回転と恒星どうしの回転の軌道面が一致している。だがアルマ望遠鏡の観測結果によれば、恒星の間隔が離れた連星系では軌道がかなり傾いた惑星も生まれているようだ。

【2020年3月27日 アルマ望遠鏡NRAO

太陽系には恒星が1つしかないが、宇宙の恒星の多くは2つ以上で一緒に生まれ、互いの周りを回る「連星」となっている。1995年以来、太陽以外の恒星を周回する惑星(太陽系外惑星)が数多く見つかっているが、その中には連星系の主星を公転する惑星もある。こうした惑星からは2つの太陽が見えていることだろう。

太陽が2つある光景
太陽が2つある惑星から見た光景の想像図(提供:NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

こうした連星の惑星は、若い恒星を取り巻く塵とガスの円盤(原始惑星系円盤)の中で形成されたと考えられる。これまでに観測された原始惑星系円盤の多くは単独の恒星を取り巻くものだったが、アルマ望遠鏡は周連星系円盤、つまり連星を取り巻く原始惑星系円盤も観測を行ってきた。周連星系円盤の中には形がゆがんだものや恒星同士が回る連星の軌道面に対して大きく傾いたものもある。

米・カリフォルニア大学バークレー校のIan Czekalaさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡が観測した19個の周連星系円盤のデータを分析した。その結果、連星系の軌道周期が短い、つまり恒星同士が近づいているものほど、連星系の軌道と周連星系円盤の向きがよく一致していることがわかった。逆に、軌道周期が長く恒星間の距離が大きな連星系では、周連星系円盤は連星系の軌道面から大きく傾いていた。

周連星系円盤の例
アルマ望遠鏡が観測した周連星系円盤の例。各観測画像の左下は連星の軌道を示す。(左)コップ座の「HD 98800 B」と呼ばれる連星系(軌道周期は315日)。中央の連星系の軌道面と円盤面が一致していない。(右)「さそり座AK星」と呼ばれる連星系(軌道周期13.6日)。連星系の軌道面と円盤の傾きが一致している(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. Czekala and G. Kennedy; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

研究チームはこの結果を、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測と比較した。ケプラーは定常観測期間が4年間と限られていたため、惑星を捜索する連星系は軌道周期40日以内というコンパクトなものばかりであり、ケプラーが発見した連星系の系外惑星はすべて軌道面が連星系と一致していた。これは、今回のCzekalaさんたちの分析を踏まえれば必然の結果だったということになる。ケプラーは連星系に対して軌道が大きく傾いた惑星を見逃していたのではなく、そうした条件を備えた連星はそもそも観測していなかったのだ。

今回の研究は、間隔が大きな連星系の周りには軌道が大きく傾いた惑星が存在しうることを示唆しているが、こうした惑星は直接撮像や重力レンズを使った検出などによって発見できる可能性がある。

今後Czekalaさんたちは恒星の間隔が近いときに連星系の軌道面と周連星系円盤の傾きが一致する理由を探りたいとしている。「アルマ望遠鏡や、現在構想中の次世代ミリ波センチ波干渉計『ngVLA』を使って、円盤の構造をこれまでにないほど詳しく調べたいと考えています。円盤のねじれや傾きが惑星形成環境にどのような影響を及ぼすのか、その中で作られる惑星の性質にどう影響するのかを明らかにしたいのです」(Czekalaさん)。