太陽観測ロケット「FOXSI-3」、世界初の観測に成功

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太陽観測ロケット「FOXSI-3」が世界で初めて、軟X線の低エネルギー域で太陽コロナを撮像分光観測することに成功した。高エネルギー現象やナノフレアの理解が進むことが期待される。

【2018年9月12日 国立天文台名古屋大学

国立天文台や名古屋大学などが研究を進めている「FOXSI」は、観測ロケットで太陽のコロナが放つX線を集光撮像分光観測する日米共同プロジェクトである。その3号機となる「FOXSI-3」が、9月8日(日本時間)に米・ニューメキシコ州のホワイトサンズ射場から打ち上げられた。FOXSI-3は最高到達高度約300kmの弾道軌道で約15分間飛翔し、X線輝度の異なる3つの太陽コロナ領域である「活動領域」「静穏領域」「太陽の北極域」を約6分間観測した。

FOXSI-3が搭載された観測ロケットと研究チーム
FOXSI-3が搭載された観測ロケットと研究チーム(提供:NASA、FOXSI-3 team)

FOXSI-3には、硬X線域(主に4~20keV(キロ電子ボルト)の高エネルギー域)を観測する6本の望遠鏡と、軟X線域(主に0.5~10keVの低エネルギー域)を観測する1本の望遠鏡が搭載されており、広い範囲のエネルギーのX線を観測して太陽コロナ中の超高温プラズマや非熱的プラズマを詳細に調査できるようになっている。

このうち軟X線域用の望遠鏡は今回新たに採用されたものだ。1秒間に250枚の撮像が可能な高速カメラや、可視光線を遮りX線だけを透過するフィルターなどにより、世界初となる太陽コロナの軟X線の撮像分光観測に成功した。

FOXSI-3の科学目的は、太陽コロナにおける高エネルギー現象(エネルギー解放、粒子加速、加熱など)の理解だ。そのうちの一つが、「ナノフレア」のコロナ加熱への寄与を調べることである。

太陽の表面温度は約6000度であるのに対し、上空のコロナの温度は数百万度という高温となっている。その加熱メカニズムはまだわかっておらず、「コロナ加熱問題」と呼ばれる謎の解明は太陽研究における大きな課題である。

ナノフレアは、通常の太陽フレア(爆発現象)の10億分の1程度の極めて小さなフレアだが、この現象によって1000万度の高温のプラズマが生成されると考えられており、コロナ加熱の担い手の有力な候補の一つとみられている。今後のデータ解析で、1000万度の高温プラズマが太陽コロナ中に恒常的に存在するかどうかを調べることで、ナノフレアとコロナ加熱の関係について理解が進むと期待される。

「わずか6分間の観測でしたが、これまでに誰も手にしたことがないデータを手にすることができ、打ち上げ後は興奮が収まりませんでした。データの解析は始まったばかりですが、貴重な科学成果が出せそうな予感がしています。興奮はまだまだ続きそうです」(FOXSI-3の軟X線装置「Co-PI」担当 国立天文台 成影典之さん)。

皆既日食時のコロナ
2017年8月に北米で見られた皆既日食時のコロナ(撮影:Aquariusさん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ