「こうのとり」導電性テザー実証実験を実施、テザー伸展せず

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28日に国際宇宙ステーションから分離した補給機「こうのとり」6号機で、スペースデブリ除去システム構築の最初のステップとして、導電性を持つ「テザー」の実証実験が実施された。しかしテザーの伸展が認められず、状況の確認や対策が検討されている。

【2017年1月31日 JAXA

現在地球の周りには、位置が正確にわかっているものだけでも1万6000個近くの物体が軌道上を周回しており、レーダーなどでとらえられない数cmから数mmのものは数十万個から数千万個以上あるともいわれている。こうした物体の大半は使われなくなった衛星や打ち上げに使われたロケット、それらが壊れて発生した破片などで、宇宙のゴミ「スペースデブリ」と呼ばれている。

地球の周囲にある位置がわかっている物体を表示したもの
地球の周囲にある、位置がわかっている物体を表示したもの。(緑)衛星(使用済みを含む)、(黄)ロケットの上段、(赤)それ以外の破片等(提供:JAXA、以下同)

デブリと衛星との衝突を防ぐため、世界中の機関が協力して24時間体制で軌道上の物体観測を行っている。また、軌道上にあるデブリ同士が衝突することによってデブリの数がどんどん増加してしまうため、一刻も早くデブリを積極的に減らしていく必要があり、デブリ除去の研究も進められている。

JAXAではデブリを除去するための推進系として導電性テザー(ひも)推進を有望な候補の一つと考えており、その研究の一環として今月28日に、国際宇宙ステーション(ISS)補給機「こうのとり」6号機を利用した「HTV 搭載導電性テザー実証実験(KITE)」が実施された。

KITE実験中の「こうのとり」とKITE実験装置の想像図
KITE実験中の「こうのとり」とKITE実験装置の想像図

「こうのとり」6号機は昨年12月に打ち上げられISSと結合し、1月28日にISSから分離した。その分離後に「こうのとり」でKITEの運用が開始されたが、現在のところ、KITEのテザー先端部となる約20kgのエンドマスの放出、および700m級のテザーの伸展が認められていない。状況確認ならびに対策検討が行われており、引き続き再試行等を含む実験運用が進められることになっている。

なお、実証実験後はテザーは切断され、「こうのとり」は大気圏に再突入して燃え尽きる。「こうのとり」は計画通りに飛行中で、2月6日に予定されている大気圏再突入に対して今回の実験の影響はないとのことだ。

イメージビデオ「スペースデブリリムーバブル」