最後の「こうのとり」、大気圏再突入

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8月20日午後4時ごろに国際宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機が大気圏に再突入し、初号機から始まった11年間の「こうのとり」の運用が終了した。

【2020年8月21日 JAXA

日本の国際宇宙ステーション(ISS)補給機「こうのとり」9号機は、8月19日午前2時37分(日本時間、以下同)にISSから分離し、3度の軌道調整を経て20日午後4時7分ごろ大気圏に再突入した。同機の破片は、午後5時までに着水したと推定されている。

ロボットアームで把持されている「こうのとり」9号機
ISSのロボットアームで把持されている「こうのとり」9号機(提供:NASA TV/JAXA)

「こうのとり」9号機の再突入時のHTV運用管制室
「こうのとり」9号機の大気圏再突入時のHTV運用管制室(提供:JAXA)

ISSに滞在する宇宙飛行士を支える食糧や日常品などの物資補給、実験装置やISSのバッテリーなどの輸送、さらに使用済みの機器や衣類などの廃棄を行うため、日本では1998年から補給機の開発を開始し、10年以上の歳月をかけて「こうのとり」を実用化した。「こうのとり」はISSに接近後に相対停止してロボットアームで把持される「ランデブーキャプチャ」や、総重量6tという世界最大級の積載能力などの特徴を持ち、これまで11年間にわたり高い技術で、一度の失敗もなくISSの運用を支えてきた。

「こうのとり」で培われた知見と技術は、現在開発が進められている新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」へと引き継がれる。

《宇宙航空研究開発機構 山川宏理事長談話(抜粋、要約)》

本日、宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)は軌道離脱を実施し、計画どおり、大気圏への再突入を無事完遂することができました。

今回で最終号機となった「こうのとり」は、2009年の技術実証機から、大型の実験装置をISSへ輸送できる唯一の宇宙船として、ISSの運用・利用に欠かすことができない重要な役割を担ってまいりました。とくに、新型バッテリを6号機から継続して輸送したことにより、今後のISSの安定的な運用に大きく貢献できたものと考えております。

JAXAは「こうのとり」の開発・打ち上げ・運用を通じて多くの技術や知見を獲得してまいりました。有人宇宙施設に飛行・接近する宇宙機に課せられる厳しい安全基準を満足するため、宇宙機をISSに対して相対停止させISSロボットアームで把持する技術を開発し、「こうのとり」に適用してまいりました。この技術は米国の補給機にも採用され、国際標準となるまでに至ったと考えております。その他様々な技術実証を通じて、今後の有人宇宙活動の進展に繋がりうる成果も上げてまいりました。

JAXAでは現在「こうのとり」の後継機として新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」の開発を進めています。これまでに蓄積してきた技術や知見を活かして、着実な開発を進めてまいります。

宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機 - ISSからの離脱 ライブ中継録画(提供:JAXA)