スーパーコンピューター「京」が太陽最古の謎解決に王手
太陽の内部(太陽内部の外側30%)は中心で発生したエネルギーによって熱対流で埋め尽くされているが、その熱対流は、地球上では存在しえない非常に高度な乱流状態になっている。この乱流的なプラズマの運動による引き伸ばしによって、黒点数の増減などに見られる約11年の太陽活動周期を駆動する磁場が生成されると考えられている。
しかし、高度にカオス的な運動をする小スケールの乱流の中から秩序立った大規模磁場を生み出す過程は、これまで大きな謎だった。乱流による磁場生成は、カオス的状況が発達するほど小さいスケールが支配的となり、太陽周期を駆動するような大きなスケールの磁場構造が作られなくなっていくのである。
千葉大学大学院理学研究科の堀田英之さんたちの国際チームでは、スーパーコンピュータ「京」を用いて超高解像度の計算を行い、カオス的小スケールの乱流から大規模な磁場を生成するメカニズムを調べた。
(上)計算によって得られた乱流、(下)磁場の様子。非常に小さいスケールの磁場が発達していることがわかる(提供:千葉大学)
ある程度の解像度での計算では、これまでの予測通り、乱流が高度になればなるほど小スケールの磁場が支配的となり、大規模な磁場は作られなくなっていった。
しかし、今回可能になった超高解像度での計算では小スケールの磁場生成が非常に活発になり、小スケールの乱流運動のエネルギーを上回った。その結果、小スケールでの乱流運動が強く制限され、高解像度であるにもかかわらず乱流が高度でなくなった。そして、太陽のような高度に乱流が発達した状況でも、大スケールの磁場が発達することがわかったのである。
このメカニズムはこれまで誰も考えすらしていなかったものだが、実際の太陽でも働くはずと考えられる。太陽活動周期の問題解決のための、基本的で重要な機構を解明した研究結果である。
〈参照〉
- 千葉大学: 太陽最古の謎 解決に王手 スーパーコンピュータ「京」による世界最高解像度計算で太陽の磁場生成メカニズムを世界で初めて解明 PDF
- 東京大学: 太陽最古の謎解決に王手 ―スーパーコンピュータ「京」による世界最高解像度計算で 太陽の磁場生成メカニズムを世界で初めて解明―
- Science: Large-scale magnetic fields at high Reynolds numbers in magnetohydrodynamic simulations 論文
〈関連リンク〉
- スーパーコンピュータ「京」: http://www.aics.riken.jp/
- アストロアーツ:
- 投稿画像ギャラリー:
- 太陽
- 黒点
- 天文の基礎知識: 太陽
- 星ナビ.com:
- 2014年9月号 連載「極大期に入った太陽を知る 3:黒点の増減と太陽活動」
- こだわり天文書評: 「太陽の科学 磁場から宇宙の謎に迫る」
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