宇宙最初の星は「ひとりっ子」で誕生する

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宇宙最初の星々「ファーストスター」が誕生する際、磁場強度が指数関数的に強くなるために星周円盤の分裂が抑制され、大質量のファーストスターが「ひとりっ子」で誕生することが磁気流体シミュレーションで示された。

【2022年8月26日 九州大学

初期宇宙に誕生した第一世代の星々である「ファーストスター」がどのような天体なのかを明らかにするため、数値シミュレーションを用いて誕生の様子を再現する理論的研究が行われてきた。近年ではファーストスター形成における磁場の影響に注目が集まっているが、これまでのシミュレーションでは星の周りの磁場を無視する簡単化が行われていたため、厳密性に欠けていた。

東京大学の平野信吾さんと九州大学の町田正博さんの研究チームは、ファーストスターの表層から星が生まれるガス雲までを空間分解する高精度な磁気流体シミュレーションを行って、ファーストスター形成における新たな磁場増幅機構を発見した。

まず、誕生間もないファーストスターの回転により、ファーストスターに突き刺さる磁力線が巻き上げられて磁場が強まる。その後、星周囲のガスの回転によって増幅した磁場が外側へと伝搬することで、強磁場領域が徐々に拡大する。ファーストスターが誕生する初期宇宙の磁場強度は現在の宇宙と比べて10桁以上低く極めて微弱なものだが、今回発見した増幅機構が働くことで磁場は指数関数的に15桁ほど増幅するという。

磁場強度分布の変化
シミュレーションで示された磁場強度分布の変化。(左)原始星形成時、(中央)10年後、(右)1000年後。高密度領域では磁場強度が15桁にもわたり指数関数的に増幅し、時間の経過とともに強磁場が低密度領域(星形成領域の外側)へ広がっていく(提供:九州大学リリース、以下同)

これまでの数値シミュレーションでは、星周ガスの回転が速く、星周円盤が分裂して複数の小質量ファーストスターが誕生すると考えられていた。しかし、今回の磁気流体シミュレーションで現れた磁場増幅メカニズムを考慮すると、強磁場による磁気ブレーキ効果によってファーストスターを取り囲む星周ガスの回転が弱まる。すると、円盤分裂が抑制されるため小質量ファーストスターは誕生せず、大質量のファーストスターが「ひとりっ子」として誕生することが示された。

流体・磁気流体シミュレーションの比較
原始星形成後1000年の、赤道面の密度分布の比較。(左)流体シミュレーション、(右)磁気流体シミュレーション。流体シミュレーションでは小質量のファーストスターが複数誕生し、磁気流体シミュレーションでは大質量ファーストスターが1つだけ誕生する

従来の数値シミュレーションで示されていた小質量ファーストスターは、宇宙年齢である138億年以上の寿命を持つため、天の川銀河に存在するはずだが観測で見つかっていない。今回、小質量ファーストスターは誕生しないことが示され、この観測的問題も解決した。

本研究はファーストスター形成における磁気流体効果の重要性を明確にするものであり、同時に形成シナリオの再構築を促すものである。平野さんたちは、今回発見した磁場増幅メカニズムが初期宇宙における他の天体や大質量ブラックホールにおいても起こることを確認している。今後は星形成仮定の物理条件を変え、今回発見した影響がどこまで普遍的なものかを検証する予定だ。

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