最遠の渦巻銀河の円盤に伝わる震動を検出

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初期宇宙に存在する渦巻銀河内のガスの動きをアルマ望遠鏡で観測したところ、円盤部に銀震が作られていることが明らかになった。外からのガス流入や他の銀河との衝突で生じたとみられ、宇宙初期の銀河成長を理解する手がかりとなる成果だ。

【2024年1月16日 アルマ望遠鏡

宇宙初期の銀河は現在の銀河と比べて星形成が非常に活発だ。おとめ座の方向に位置する観測史上最古の渦巻銀河「BRI 1335-0417」の場合、質量は天の川銀河と同程度だが、星形成速度は数百倍にも達する。こうした高い星形成率は、星の材料であるガスが盛んに銀河に供給されることにより実現されているとみられ、これを調べるためには銀河内のガスの動きや分布を観測研究することが重要となる。

オーストラリア国立大学の津久井崇史さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いてBRI 1335-0417を観測し、近傍の銀河と同程度の詳細さで、銀河内のおよそ70の異なる場所におけるガスの運動を調べた。

津久井さんたちはガス運動の速度データから銀河円盤の大局的な回転運動を差し引くことにより、細かいスケールの微弱な運動を分析した。その結果、細かいスケールでのガスの速度が渦巻状のパターンを示し、ガスの分布が示す渦巻状のパターンと一致した。この特徴は、数値シミュレーションで調べられた銀河円盤内を地震のように垂直に運動する振動波である「銀震」と一致するもので、ガスや他の小さな銀河が円盤に激しく衝突していることを示唆している。銀震のように速度差が小さく空間スケールが小さい運動の測定は難しく、遠方銀河で測定されたのはこれが初めてのことだ。

BRI 1335-0417のガス分布、ガスの運動、数値シミュレーションの結果
(左)BRI 1335-0417のガス分布。(中)円盤に伝わる地震波による小さいスケールのガス運動。青い領域は私たちの方向に近づく運動、赤い領域は遠ざかる運動を示す。黒線は渦巻状のパターンを示す。(右)銀震を再現した数値シミュレーションの結果。似た分布と運動が見られる(提供:(左と中)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Tsukui et al.,(右)Bland-Hawthorn and Tepper-Garcia 2021)

また、ガス分布を調べたところ、円盤に棒状の構造が存在することも明らかになった。棒状構造は天の川銀河など一部の銀河に見られるもので、銀河内のガスを撹乱し中心へと運ぶ役割を果たしている。今回の発見は、これまでに知られている中で最も遠い棒状構造となる。

宇宙初期における渦巻構造は珍しく、その正確な形成シナリオは未だにわかっていない。今回の観測で明らかにされた、最遠方の渦巻銀河における渦巻構造と円盤内の銀震との一致は、外部からのガスの流入や他の小さな銀河との衝突によって振動運動が生じていることや、流入するガスや他の銀河のガスの降着によって銀河の渦巻構造が作り出されたことを強く示唆するものだ。

「天の川銀河でも10億年程度昔に、いて座矮小銀河との相互作用で銀震が引き起こされたことが、近年盛んに議論されています。今回の成果は、120億光年彼方にある大昔の銀河でも同様の現象が引き起こされていたことを発見したものです。おそらく天の川銀河もこのような銀震を何度も繰り返し経験してきたのでしょう」(鹿児島大学天の川銀河研究センター 馬場淳一さん)。

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