星屑の再利用で成長し続ける太古の巨大銀河

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110億年前の巨大銀河が、死んだ星が残したガスを再利用することで新たな星を形成していることが、すばる望遠鏡とケック望遠鏡の観測で判明した。

【2023年6月6日 すばる望遠鏡ケック望遠鏡

これまでの遠方宇宙の観測では、成長途上の銀河がたくさん発見されている。当然、それらの銀河が星を作り続けて成長するには、星の材料となるガスが絶えず供給される必要がある。このときに供給されるのは、宇宙誕生から手つかずだった原初的なガスだろうか、それとも前の世代の星に使われ、超新星爆発とともに放出されたガスだろうか。

この疑問に答えるべく、中・清華大学のShiwu Zhangさんたちの研究チームは米・ハワイのすばる望遠鏡とケック望遠鏡を用いて、うしかい座の方向にあり110億年前の宇宙に存在する巨大銀河「MAMMOTH-1」を観測した。

MAMMOTH-1の想像図
MAMMOTH-1の想像図。矢印は星の材料となるガスの流れを表す。右下は今回の観測に使われたすばる望遠鏡とケック望遠鏡(提供:精華大学, NAOJ)

観測で得られたデータを解析したところ、MAMMOTH-1の中心から半径約30万光年に及ぶ範囲で、水素とヘリウムに加えて炭素が検出された。星形成に供給されるガスが原初的なものであれば、水素と少量のヘリウムしか含まれないはずだ。それよりも重い炭素の存在は、恒星内部での核融合反応を経て作られた元素がガスに含まれることを意味する。MAMMOTH-1は110億年前という太古の銀河であるにもかかわらず、ガスに含まれる元素の比率は、驚くべきことに現在の太陽と同等だった。

さらに、銀河を取り巻くガスの動きをシミュレーションと比較したところ、1年間に太陽700個分に相当するガスがMAMMOTH-1へ還流していることが明らかになった。一方、MAMMOTH-1で毎年誕生する恒星の合計質量は太陽80個分と見積もられている。つまり、銀河はガスの再利用だけで成長を続けることができるというわけだ。

「今回の観測結果は、宇宙初期のあらゆる巨大星形成銀河において、リサイクルされたガスの流れが星の材料を供給していた可能性を初めて示唆するものです」(清華大学 Zheng Caiさん)。