【訃報】コメットハンター ドナルド・マックホルツさん
【2022年8月18日 Don Machholz】
ドナルド・マックホルツ(Donald Machholz)さんは1952年、米・バージニア州ポーツマスに生まれた。8歳のとき天文に興味を持ち、13歳のときに口径2インチの屈折式望遠鏡を初めて手にして星空観測を始めた。その後両親にプレゼントされた口径6インチの望遠鏡で全メシエ天体を観測している。
1971年に米陸軍に入隊してからは、昼に気象観測員として勤め、夜に天体観測を続けた。1970年代半ばには自ら開発したマッピングシステムで彗星掃索を開始した。1700時間の掃索の末、1978年9月12日に最初の彗星(C/1978 R3)を発見。1985年5月には2つ目の彗星(C/1985 K1)を発見した。さらに、その翌々年から2018年までの彗星の発見数は10個にのぼり、マックホルツさんの名前を冠した彗星の数は、計12個となった。
マックホルツさん(2019年11月22日撮影)(提供:Donald Machholz (CC BY-SA 4.0))
2005年1月8日ごろにプレアデス星団と大接近したマックホルツ彗星(C/2004 Q2)。同彗星は2005年1月に地球に接近し、約3.5等まで明るくなった(撮影:冨沢省一さん、画像クリックで天体写真ギャラリーのページへ
マックホルツさんは、一晩でメシエカタログの天体を全て観測する「メシエマラソン」の発案者の一人でもあり、自身も40年間で50回完走している。
ステージ3の前立腺がんを克服して年間120夜もの観測を精力的に行っていたマックホルツさんだったが、8月9日の早朝に新型コロナウイルス感染症のため米・アリゾナの自宅で急逝した。
マックホルツさんが発見した(氏の名前が付けられた)彗星
- C/1978 R3 Machholz(マックホルツ)
- C/1985 K1 Machholz(マックホルツ)
- 96P P/Machholz(マックホルツ)
- C/1988 P1 Machholz(マックホルツ)
- C/1992 F1 Tanaka-Machholz(田中(善一)・マックホルツ)
- C/1992 N2 Machholz(マックホルツ)
- C/1994 N1 Nakamura-Nishimura-Machholz(中村(正光)・西村(栄男)・マックホルツ)
- 141P P/Machholz(マックホルツ)
- C/1994 T1 Machholz(マックホルツ)
- C/2004 Q2 Machholz(マックホルツ)
- C/2010 F4 Machholz(マックホルツ)
- C/2018 V1 Machholz-Fujikawa-Iwamoto(マックホルツ・藤川(繁久)・岩本(雅之))
〈参照〉
- Donald Machholz Twitter:Don Machholz, passed away unexpectedly and swiftly from COVID at 3:15 AM on Tuesday, August 9, 2022
〈関連リンク〉
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