キュリオシティ、火星着陸から10年
【2022年8月8日 NASA JPL】
2012年8月5日、NASAの火星探査車「キュリオシティ」が火星の赤道付近にある「ゲールクレーター」に着陸した。以来10年間でキュリオシティは、同クレーターと、クレーターの中央にある「シャープ山(アイオリス山)」の山麓を約29km走行し、着陸地点から標高にして625m登った。その道中で岩石と砂のサンプルを41個分析し、火星の雲や衛星フォボスとダイモスの太陽面通過を観測したり、将来の有人火星探査に備えて火星表面の放射線量を測ったりもしている。2022年4月にはミッションを3年間延長することが決定された。
これまでで最大の成果は、ゲールクレーターに数千万年以上にわたって液体の水があったことを突き止めたことだ。液体の水は有機物などとともに、生命に不可欠な物質だ。このクレーターにはかつて湖が存在し、時代によって大きさが変化していたとみられる。また、シャープ山の上部の地層は比較的新しい時代の火星環境を記録している。
現在キュリオシティはシャープ山麓の「ゲディズ峡谷 (Gediz Vallis)」を走行していて、新たな地域に移動しつつある。次の新天地は水が失われた後の時代に形成されたと考えられ、硫酸塩が多く残されているエリアだ。運用チームは今後数年にわたってこの地域を探査する計画で、シャープ山の形成後期に起こった洪水でできたかもしれないゲディズ峡谷の川の跡や、地下水の作用で埋まった地表の割れ目などに注目している。
「私たちは古代の火星の気候が劇的に変化した証拠を見ています。現在の疑問は、これまでに見つけた生命に適した環境が、この気候変動の後も続いたかどうかです。こうした環境は失われて二度と復活しなかったのか、それとも数百万年ごとに現れたり消えたりするのでしょうか?」(「キュリオシティ」プロジェクトサイエンティスト Ashwin Vasavadaさん)。
10年にわたって探査が続けられているのは、JPLの数百名からなる専任の技術者達のおかげだ。スタッフはキュリオシティの車輪のひび割れを記録したり、ローバーに送信するプログラムをチェックしたり、火星環境を模したJPL内の「マーズ・ヤード」で岩石のドリル作業のテストを行ったりしている。
たとえば、キュリオシティが岩石に穴を開けるドリルの繰り出し機構が故障した際は、ドリルを使う探査を1年以上休んで穴開けの方法を変更した。最近では、ロボットアームのブレーキ機構の一部が故障した。故障箇所には予備の系統があったために現在も正常に使えているが、ドリル作業をよりソフトに行って予備のブレーキ機構を長持ちさせることにしている。
車輪もなるべく損傷させないよう、鋭い凹凸のある地形に常に注意しており、凹凸を乗り越えるときにスリップを防ぐ「トラクションコントロール」機能も制御プログラムに組み込んだ。
運用チームはキュリオシティの電力低下にも対応している。キュリオシティは太陽電池パネルではなく、プルトニウムが崩壊するときの熱を電力に変換する原子力電池を使っている。プルトニウムの崩壊が進むにつれて、1日に活動できる量は1年目よりも短くなっている。チームではローバーが毎日使う電力量を計算し、なるべく複数の作業を並行して行うようにしている。
注意深い計画と技術的な工夫で、運用チームはキュリオシティがこの先も数年にわたって活動できると期待している。
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