生まれたてのジェットとガス雲の壮絶な衝突現場

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日韓合同VLBI観測網KaVAを用いた詳細な電波観測で、超大質量ブラックホールから吹き出したジェットが数年のうちに成長して高密度ガス雲に衝突する様子がとらえられた。

【2021年10月14日 国立天文台水沢

私たちから約2億3000万光年離れたペルセウス座銀河団の真ん中に位置する銀河NGC 1275(電波源3C 84)は、銀河中心核の超大質量ブラックホールが周囲の物質を飲み込み、その一部を強力なエネルギーとともに放出することで強力な電磁波を発している。

NGC 1275では2005年ごろに新たなジェット噴射が始まり、注目されている。工学院大学の紀基樹さんを中心とする国際研究チームは、日韓計7台の電波望遠鏡が連携して高い空間解像度を実現する超長基線干渉計(VLBI)プロジェクト「KaVA」で数年間にわたって、ジェットの吹きだまりである「電波ローブ」を観測し続けてきた。

【研究成果】生まれたての巨大ブラックホールジェットと高密度ガス雲の壮絶な衝突現場(提供:国立天文台水沢VLBI観測所 秦和弘)

紀さんたちは電波ローブの中で一番明るく輝くホットスポットの位置に注目した。ホットスポットはジェット噴流の先端に相当する。2016年半ばまで電波ローブを引っ張りながら南下していたホットスポットは、突然動きを止めて、2017年末まで停滞した。これはジェットが高密度なガス雲と衝突してせき止められていた証拠だと考えられる。

電波ローブは2018年に再び南へ動き始めたが、ホットスポットは消え、電波ローブの形も歪んで暗くなっている。超大質量ブラックホールから噴出したジェットが進路上の物質に衝突して変形する様子がとらえられたのは初めてのことだ。

電波ローブとホットスポットの時間変化
2012年7月から2020年1月までの電波ローブとホットスポットの時間変化。ジェットは2方向に伸びるので電波ローブも2つあるはずだが、NGC 1275の新しいジェットによるローブはまだ小さいため、北側はブラックホール周囲の降着円盤に遮られて見えておらず、南へ伸びるものだけが見えている。画像クリックで拡大表示

「ホットスポットがおよそ1年間も動きを止めている観測データを目の当たりにし、まるで宇宙における交通事故の現場を目撃したようで、とても驚きました。活動銀河中心核では、これまで考えてられていたよりも多くの高密度ガス雲が浮遊していて若いジェットと激しい衝突を起こしているのかもしれません」(紀さん)。

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