観測史上2例目の恒星間天体、新発見のボリソフ彗星

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今年8月に新発見されたボリソフ彗星(C/2019 Q4)は、その軌道から恒星間天体らしいとみられている。2017年に発見されたオウムアムアに続く、史上2例目の恒星間天体だ。12月ごろには15等級になる見込みである。

【2019年9月20日 NASA JPLジェミニ望遠鏡カナリア天体物理研究所

8月30日、ロシアのマルゴ天文台でGennady Borisovさんが新しい移動天体「C/2019 Q4」を発見した。追観測で彗星活動が確認されたことから、この天体は「ボリソフ彗星」と名付けられた。

その後、世界中の天文台や彗星観測者によって観測データが積み重ねられていき、ボリソフ彗星の正確な軌道がわかってきた。その結果、ボリソフ彗星は太陽系外からやってきて太陽系を去っていく恒星間天体らしいことが明らかになった。2017年10月に発見された「オウムアムア」に続いて2例目となる恒星間天体であり、恒星間彗星としては史上初の発見となる。

カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡で観測されたボリソフ彗星
2019年9月10日、ハワイ・マウナケアにあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡で観測されたボリソフ彗星(提供:Canada-France-Hawaii Telescope)

9月13日にはスペイン領カナリア諸島のカナリア大望遠鏡でボリソフ彗星のスペクトル観測が行われ、その特徴が太陽系の彗星のものとほとんど変わらないことがわかった。「他の惑星系の彗星も太陽系の彗星と似ている可能性があることを示す結果です。ボリソフ彗星は、太陽系のオールトの雲で形成された彗星と同じようなプロセスで誕生したのかもしれません」(カナリア天体物理研究所(IAC) Javier Licandroさん)。

GTCで観測されたボリソフ彗星
カナリア大望遠鏡で観測されたボリソフ彗星(左図)、ボリソフ彗星のスペクトル(右図)。紫色の線はこれまでに観測された太陽系の彗星のスペクトルを示しており、大きく異なっていないことがわかる(提供:IACプレスリリースより)

ボリソフ彗星は現在(9月20日時点)、太陽から約4億km、地球から約5億km離れているが、12月ごろには太陽と地球から約3億kmまで近づく。このころには15等級ほどの明るさになると見込まれており、望遠レンズや望遠鏡直焦点で撮影することができる(眼視するには口径50cmクラスが必要)。

また、大型望遠鏡であれば来年秋ごろまでボリソフ彗星が観測可能とみられている。オウムアムアは発見時点ですでに太陽系から遠ざかるように動いていたためじゅうぶんな追観測ができなかったが、ボリソフ彗星は今後1年近くも追い続けることができそうだ。恒星間彗星の核の大きさや自転周期といった特徴が詳しく調べられることが期待される。

ボリソフ彗星の軌道 ボリソフ彗星の動き
ボリソフ彗星の軌道と動き。それぞれ画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)。データはMPEC 2019-S09で公表されたものに基づく(以下同)。12月にコップ座からうみへび座で15等級前後になり、未明から明け方に南東の低空で見られそうだ

位置推算表 天体グラフ
ステラナビゲータで出力した、ボリソフ彗星の位置推算表と天体グラフ。それぞれ画像クリックで表示拡大。現時点のデータに基づくと地球最接近は12月28日、太陽最接近(近日点通過)は12月8日(いずれも日本時)

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