99.99%がダークマターでできた銀河
【2016年8月29日 W. M. Keck Observatory/Gemini Observatory/YaleNews】
米・イェール大学のPieter van Dokkumさんたちの研究チームが、米・ハワイにあるW. M. ケック望遠鏡とジェミニ北望遠鏡を使った観測から、かみのけ座銀河団内に新たに銀河を発見した。約4億光年彼方という宇宙スケールでは近いところにあるにもかかわらず、昨年になってようやく見つかったのは、この銀河「Dragonfly 44」がとても暗いためだ。
Dragonfly 44。(左)スローン・デジタル・スカイ・サーベイ、(右)ジェミニ望遠鏡(提供:Pieter van Dokkum, Roberto Abraham, Gemini, Sloan Digital Sky Survey)
さらに詳しく調べてみると、Dragonfly 44には見えている(電磁波で観測できる)以上の物質が存在することがわかった。星(見えている質量)が少なすぎるため、銀河を一つにまとめる働きをする何かがない限り、銀河がバラバラになるはずだからだ。
そこで、Dragonfly 44の質量を測るために、銀河内の星の運動速度が測定された。星の運動が速いほど、銀河には多くの質量があるということになる。星の運動速度からDragonfly 44の質量を求めたところ、太陽1兆個分と見積もられた。これは天の川銀河とほぼ同程度の質量だ。
そしてこの全質量のうち、星や普通の物質が占める割合は、わずか0.01%であることもわかった。つまり残る99.99%はダークマター(暗黒物質)だということになる。これほど大きな銀河でありながらほとんどがダークマターという銀河の存在は予想外であった。質量のほとんどがダークマターという銀河はこれまでにも見つかってきたが、それらはDragonfly 44よりもはるかに軽い矮小銀河だ。「こんな銀河がどうやって作られたのか、まったく見当もつきません」(カナダ・トロント大学 Roberto Abrahamさん)。
「Dragonfly 44は、ダークマターの研究に大きな意味を持ちます。天体のほとんどがダークマターということは、星やその他の銀河内物質などとの混同を避けることができるからです。質量の大きい新たな種類の天体を対象とした研究分野の幕開けです」(van Dokkumさん)。
〈参照〉
- W. M. Keck Observatory: Scientists Discover Massive Galaxy Made of 99.99 Percent Dark
- Gemini Observatory: Gemini Images Galaxy That Is 99.99 Percent Dark Matter
- YaleNews: Scientists discover a 'dark' Milky Way
- The Astrophysical Journal Letters: A HIGH STELLAR VELOCITY DISPERSION AND ~100 GLOBULAR CLUSTERS FOR THE ULTRA-DIFFUSE GALAXY DRAGONFLY 44 論文
〈関連リンク〉
- W. M. Keck Observatory: http://keckobservatory.org/
- Gemini Observatory: http://www.gemini.edu/
〈関連ニュース〉
- 2016/04/19 - アルマ望遠鏡の重力レンズ画像にゆがみを残した矮小銀河
- 2014/12/11 - アンドロメダ銀河のダークマター、理論予測と異なる分布
- 2012/01/20 - 自身の質量から発見された、100億光年かなたの暗い矮小銀河