磁場で抑制される銀河中心での大質量星形成

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銀河中心のリング構造中に見られる星形成領域と磁場の強さの関係を調べたところ、磁場が強いところほど大質量星の形成が抑えられるという傾向が観測された。理論モデルの問題点を解決する一つの説明となるかもしれない。

【2017年12月1日 IAC

標準的な宇宙論モデルである「ビッグバンモデル」は宇宙の誕生から現在に至るまで様々な現象や物理過程を説明するものだ。モデルではうまく説明できない問題もいくつかあり、その一つが「モデルが予測する星の形成率が高すぎ、星の誕生速度が速すぎる」という問題である。

モデルによれば銀河内にある星を生み出す物質はすべて、ずっと昔にすべて星になってしまっているはずなのだが、実際には現在も半分以上の銀河(主に渦巻銀河)で星形成活動が続いている。モデルと観測との不一致を説明するため、星形成率を下げるような様々なメカニズムが提案されている。たとえば、超新星爆発や活動銀河核が星を生み出すガス雲をばらばらにして星形成率を下げる、といったものだ。

スペイン・カナリア天体物理研究所(IAC)のFatemeh Tabatabaeiさんたちの研究チームは、ろ座の方向約5000万光年彼方に位置する渦巻銀河「NGC 1097」をハッブル宇宙望遠鏡などで観測し、磁場と宇宙線によって大質量星の形成の減速が引き起こされるという研究成果を発表した。磁場によってガス雲の崩壊が起こりにくくなり、星形成が遅くなったり止められたりするというのだ。

NGC 1097中心部のリング構造。磁場の強さを等高線で表示しており、星の多いところは磁場が強くない傾向がわかる(提供:YouTubeチャンネル「IACvideos」より)

とくに銀河中心付近に存在するリング構造を調べたところ、星形成領域では磁場が弱く、星形成が進んでいないところでは磁場が強いことが明らかになった。「様々な波長の観測を行いメカニズムを考えましたが、磁場を考慮した場合が最も星形成率の低下との関連性を実感できました」(IAC Almudena Prietoさん)。

磁場の働きで巨大な分子雲が崩壊できなければ、分子雲がさらに小さく分かれてから、それぞれで低質量星だけが形成されうる。つまり磁場が強い領域では、低質量星の割合が銀河内の他の領域に比べて高くなると考えられる。実際に大質量銀河の中心ではそうした傾向が観測されるようになっている。議論の余地があるとはいえ、Tabatabaeiさんたちの説はその傾向を後押しするものだ。

また、特に興味深いのは銀河中心の超大質量ブラックホールによって銀河核の磁場が強められるという傾向で、このことからも磁場による星形成抑制メカニズムは銀河のバルジで最も効率的に働くはずだと考えられる。

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