原始惑星系円盤の一酸化炭素は氷に隠れていた

このエントリーをはてなブックマークに追加
原始惑星系円盤を観測する際は一酸化炭素の放つ光がよく利用されるが、その一酸化炭素の観測量が理論的予測より少ないという問題があった。どうやら氷の塊の中に隠れているらしい。

【2022年8月26日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター

惑星の誕生現場である原始惑星系円盤を観測する際は、円盤に含まれる一酸化炭素に注目することが多い。一酸化炭素は原始惑星系円盤に豊富に含まれ、とても明るく見えるからだ。

このように重要な物質であるにもかかわらず、観測で検出される一酸化炭素の量と理論モデルが予測する量との間に大きな隔たりがあると、米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのDiana Powellさんは指摘する。

「これは原始惑星系円盤に関わる最大級の未解決問題かもしれません。観測する系によって、一酸化炭素は本来あるべき値に対して3分の1から100分の1しかないのです。実に大きな差です。一酸化炭素は実質的に私たちが円盤について知っている全て、たとえば質量、組成や温度などを測るために使われています。ところが私たちがこの化合物を十分に理解していないために、円盤に関する研究成果の多くはバイアスがかかっていたり不確かだったりするかもしれません」(Powellさん)。

Powellさんたちの研究チームは円盤に含まれる一酸化炭素の状態に注目した。ガス状態の一酸化炭素はアルマ望遠鏡のような電波望遠鏡で観測できるが、氷になると検出しにくく、大きな氷の塊になると特に難しいという。

原始惑星系円盤と一酸化炭素のイラスト
原始惑星系円盤と凍った一酸化炭素の想像図(提供:M. Weiss / Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian)

研究チームは系外惑星の雲を研究するために使われていたモデルを改良することにした。このモデルでは微粒子を核として氷が成長する過程が細かく記述され、氷の粒の大きさや動きを追うことができるからだ。続いて、改良モデルの有効性を確認するために、よく研究された原始惑星系円盤を持つうみへび座TW星、HD 163296(いて座)、おうし座DM星、おおかみ座IM星にこれを適用し、アルマ望遠鏡の観測結果と比較した。

モデルと観測はよく一致して、一酸化炭素は円盤から消えたのではなく凍ってしまったのだということが裏付けられた。形成されたばかりの原始惑星系円盤には一酸化炭素のガスが豊富に含まれていて検出可能だが、100万年経つと大きな氷の塊に一酸化炭素が閉じ込められ、検出しづらくなることがわかった。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では円盤中の氷も観測できる可能性があり、Powellさんは改良モデルが検証されることを期待している。

関連記事