130億年前の銀河に水分子を発見

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約130億年前の宇宙に存在する銀河SPT0311-58から、一酸化炭素分子と水分子が放つ電波が検出された。宇宙で最初の星や銀河が誕生していた時期における、活発な星形成の証拠だ。

【2021年11月12日 アルマ望遠鏡

宇宙誕生からおよそ9億年後、現在から128.8億年前の宇宙に見つかった、とけい座の銀河SPT0311-58は、当時としては質量が大きく、実際には2つの銀河が合体しつつある姿だと考えられている。このころは宇宙で最初の星や銀河が誕生していた「宇宙再電離期」が始まった時期にあたる。米・イリノイ大学のSreevani Jarugulaさんたちの研究チームがSPT0311-58をアルマ望遠鏡で観測したところ、次々と星が生まれている証拠がとらえられた。

SPT0311-58
SPT0311-58。手前の天体による重力レンズ効果を受け、2つに分かれて見えている。(左)合成像。(右)それぞれの分布を別々に示したもの。上から順に、塵(赤)、水分子(青)、一酸化炭素分子(紫、マゼンタ、ピンク)(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. Dagnello (NRAO))

「分子ガスをアルマ望遠鏡で高解像度観測した結果、大きい方の銀河で、水と一酸化炭素の分子を検出しました。酸素と炭素はごく初期に作られた元素で、一酸化炭素や水といった分子になることで、私たちが知っているような生命にとって不可欠なものになります。この銀河は、宇宙がまだ非常に若かった時代において、現在知られている中で最も質量の大きい銀河です。宇宙初期の他の銀河に比べてガスや塵が多く豊富な分子を観測できる可能性があり、生命のもとになりうる元素が宇宙初期の進化にどのような影響を与えたかをより深く理解することができます」(Jarugulaさん)。

水分子は、水素分子、一酸化炭素分子に次いで、宇宙で3番目に存在量が多い分子だ。これまでの銀河の研究から、水分子からの放射が多く観測される銀河ほど、塵が放射する遠赤外線も多い傾向にあることがわかっている。塵は若い星からの紫外線を吸収して遠赤外線として再放射しており、この遠赤外線を水が吸収することで電波を再放射しているので、水分子からの電波は、その銀河で活発な星形成が行われている指標となる。

「今回の研究は、宇宙のどこに、どの時代に水が存在するのかについての答えを提供しただけでなく、大きな疑問を投げかけています。宇宙の初期に、これほど多くのガスや塵がどのようにして集まって星や銀河を形成したのでしょうか。この答えを得るためには、SPT0311-58や類似の星形成銀河をさらに研究し、初期宇宙の構造形成と進化についての理解を深める必要があります」(Jarugulaさん)。