原始惑星系円盤の内外で異なる物質組成

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若い恒星を取り巻く原始惑星系円盤の観測で、内側と外側の炭素同位体比が異なることが示された。この比は惑星の起源を探るために使えるかもしれない。

【2022年8月18日 アルマ望遠鏡

私たちの太陽系は約46億年前に、生まれたばかりの太陽を取り巻いていたガスと塵からなる円盤(原始太陽系円盤)の中で生まれたと考えられている。その大まかなプロセスはわかりつつあるが、それぞれの天体を構成する物質が円盤のどこで作られて、どのように運ばたのかについては、多くの謎が残されている。

天体の起源を調べる上で有力な手段となるのが同位体(質量が異なる同一の元素)の組成だ。たとえば地球の水分子に含まれる水素のうち、同位体である重水素の割合は宇宙全体の平均値より高いことが知られている。一方、星が生まれる現場である分子雲に含まれる氷でも重水素の割合が高いことから、地球の水の一部は太陽が生まれた分子雲で作られた氷に由来すると推測できる。

太陽系の外に目を向ければ、若い恒星の周りにも原始惑星系円盤と呼ばれるガスと塵の雲が見つかっている。こうした原始惑星系円盤と太陽系の同位体組成を比較することで、太陽系天体の物質が円盤のどこでどのように作られたかがわかるかもしれない。しかし、多くの元素では特定の同位体が圧倒的多数を占めており、そのように豊富な同位体と希少な同位体の量を原始惑星系円盤のスペクトルで同時に正しく測定することは難しい。

総合研究大学院大学/国立天文台の吉田有宏さんたちの研究チームは、同位体を含む分子の電波スペクトルの今まで着目されてこなかった一部分を使って、原始惑星系円盤の同位体組成を測定する新たな手法を開発した。吉田さんたちはこの手法をアルマ望遠鏡による観測データに適用し、約175光年彼方の若い恒星、うみへび座TW星の周りに広がる原始惑星系円盤における一酸化炭素分子の同位体13COの12COに対する割合を求めた。

原始惑星系円盤中の炭素同位体比
うみへび座TW星周りの原始惑星系円盤中の、炭素同位体比の説明図。円盤内縁部の方が、12COに対する13COの割合が高い(提供:NAOJ)

その結果、円盤の中心から70~110天文単位(1天文単位は太陽~地球間の距離で約1.5億km)では12COの量が13COの約20倍であるのに対して、中心から130天文単位以上の外縁部では80倍以上と高かった。太陽系の多くの天体では12CO/13CO比が概ね均一であることから、原始惑星系円盤でも均一と予想されていたが、円盤内で同位体比が4倍以上変化することを示唆するという予想外の結果だ。同位体比が変化している理由は、うみへび座TW星の原始惑星系円盤が比較的歳をとっているため、円盤内の物質の進化が進んでいるからだと考えられている。

うみへび座TW星の原始惑星系円盤内だけでなく、隕石中の一部の物質では炭素同位体比が宇宙全体の平均値から外れていることが知られていたり、系外惑星の大気は13COの比率が大きいものも小さいものも見つかっていたりするなど、様々な場面で同位体比の変動が見られる。

「これらの変動の要因を明らかにし、より多くの原始惑星系円盤、太陽系外惑星、隕石などの物質の分析を組み合わせることで、太陽系や太陽系外惑星系の物質的起源を探りたいと考えています」(吉田さん)。