すばる望遠鏡HSCのデータアーカイブが始動
【2021年2月4日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC; ハイパー・シュプリーム・カム)」は、8億7000万ピクセルもの画素数で、一度に満月9個分の領域を撮影することができる。2014年から科学運用を開始し、これまでに多くの研究者の共同利用でさまざまな成果を挙げてきた。
HSCの共同利用観測で取得されたデータは1年半後に公開されることとされているが、データ量が膨大であり、検出器の感度ムラやノイズが含まれているため、扱いづらく活用が進んでいなかった。
そこで国立天文台ハワイ観測所では、HSCの生データを処理し、すぐに研究に活用できる形で世界に向けて公開する「Hyper Suprime-Cam Legacy Archive(HSCLA)」を立ち上げ、今年1月13日に最初のデータを公開した。
初回リリースでは、HSCの科学運用初年である2014年に取得された共同利用観測データ(84テラバイト)が公開されている。約580平方度(満月およそ3000個分)の領域をカバーしており、1億5000万個もの天体の位置、明るさ、色といった情報が含まれている。
HSCLAで公開された画像の例、アンドロメダ座大銀河M31の衛星銀河の一つ「アンドロメダIII」(2014年の共同利用観測データより、g、i バンドの2色合成)。個々の星が分離されており、その明るさや色などを調べることで、銀河の成り立ちに迫る情報が得られる(提供:国立天文台、以下同)
画像の例、約26億光年の距離(赤方偏移z=0.21)にある銀河団ペア(2014年の共同利用観測データより、g、iバンドの2色合成)。撮像された領域(約0.23平方度、満月の約1.2倍)内に10万個もの天体が検出されている。銀河団同士が衝突しつつあるという珍しい現象の現場かもしれない
6年間の科学運用でHSCにより取得されたデータの中には、まだ知られていない新しい発見が眠っているかもしれない。ハワイ観測所では今後もより多くのデータを処理し、HSCLAを魅力的な科学アーカイブへ発展させることを目指している。
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