渦巻き模様が示す複雑な惑星誕生現場

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塵でできた原始惑星系円盤が見つかっていた若い星をアルマ望遠鏡でさらに観測したところ、塵の外側にガスでできた複雑な渦巻き模様が見つかった。

【2020年8月7日 アルマ望遠鏡

太陽系の惑星も太陽系外惑星も、若い星の周りにできるガスと塵の円盤(原始惑星系円盤)の中で誕生したものだ。アルマ望遠鏡はこれまでに、たくさんの惑星誕生現場を高い解像度を活かして撮影してきた。その多くには、同心円状のリングや隙間といった構造があり、まさに生まれつつある惑星がそこにある可能性を示している。最も有名な例としては、「おうし座HL星」や「うみへび座TW星」の円盤が挙げられる。

地球から約520光年の距離に位置する若い星「おおかみ座RU星」も、そのような天体の一つだ。「DSHARP(Disk Substructures at High Angular Resolution Project: 高解像度による原始惑星系円盤構造観測プロジェクト)」により、形成途中の惑星の存在を示唆する星を取り巻く塵の円盤にリング模様があることが明らかになっている。

今回、米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのJane Huangさんたちの研究チームは、おおかみ座RU星を取りまく円盤の外側にかすかに一酸化炭素分子ガスが広がっていることに気づき、アルマ望遠鏡を使って塵ではなくガスの分布を観測した。原始惑星系円盤には、実は塵よりもガスのほうが豊富に含まれている。塵は惑星の「種」を作るために必要だが、ガスは惑星の大気の材料となる。

観測の結果、星の近くの塵の円盤の外側に、ガスでできた立派な渦巻き腕が存在していることが明らかになった。その大きさは、中心からおよそ1000天文単位(1500億km)にも及ぶ。過去の観測で見つかっていた塵の円盤が半径60天文単位(75億km)だったのと比べるとはるかに大きい。

おおかみ座RU星を取り巻く塵の円盤と巨大な渦巻き模様
アルマ望遠鏡によるおおかみ座RU星と周囲の画像。(左下)おおかみ座RU星を取り巻く塵の円盤、(画像中央)より広い領域に広がるガスが作る巨大な渦巻き模様(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Huang and S. Andrews; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

アルマ望遠鏡が行ってきた原始惑星系円盤に含まれる塵の観測は、惑星形成に対する私たちの理解を大きく変革してきた。しかし、今回得られたガスの分布から、その理解でさえ単純化しすぎたもので、実際の惑星誕生の現場は、ずっとカオスな状態にあるということが示された。

「アルマ望遠鏡を使った長時間観測の結果として、ガスの渦巻き模様が見えてきたということは、これまで私たちは惑星形成環境の全貌をとらえきれていなかったということになります。他の原始惑星系円盤でも、ガスの構造を見逃しているかもしれません」(Huangさん)。

研究チームは、ガスの渦巻き模様ができる原因について複数のシナリオを挙げている。ガス円盤は質量が大きいため、自らの重力で形が崩れつつあるのかもしれない。または、おおかみ座RU星に別の星が近づき、その重力の影響で円盤が波立ったのかもしれない。さらに、円盤を取り囲む星間物質が、この渦巻腕に沿って星に流れ込んでいる可能性も考えられている。

「これらのどの説も、私たちの観測結果を完全には説明することができません。私たちがまだ知らないメカニズムが惑星形成の途中で生じているのかもしれません。おおかみ座RU星と似た構造の円盤を持つ別の星が見つかれば、謎を解く手がかりが得られるでしょう」(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Sean Andrewsさん)。