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分裂した彗星を見よう!〜73P/シュワスマン・ワハマン

彗星について知りたい

彗星ってなに?

百武彗星のコマ

 彗星は、夜空に長い尾を引いて現れる天体です。日本では「ほうき星」とも呼ばれてきました。前ぶれもなく現れ、姿が不気味に見えたことから、かつては世界各地で「不吉の前兆」とされてきました。
 彗星は、数週間から数か月にわたって、明るさと尾の長さを変えながら、星空を移動していきます。夜空で一瞬光って消えてしまう流星とは別のものです。

 彗星の中心部にある本体を「核」といいます。核は、水や二酸化炭素の氷とチリからできています。泥の混じった汚れた雪だるまを想像するとわかりやすいでしょう。核の大きさは直径が10kmくらいのものがふつうです。彗星は、約46億年前に太陽系ができたとき、惑星になれなかった小天体と考えられています。つまり、太陽系が誕生したときの状態をとどめた、原始太陽系時代の「化石」なのです

さまざまな彗星

さまざまな彗星

 彗星は、太陽の周りを回る太陽系の天体の仲間ですが、惑星のように円に近い軌道を回っているわけではありません。太陽のはるか遠くから太陽系の内部に近づき、太陽の近くをかすめて、また遠ざかっていきます。何度も太陽への接近を繰り返す「周期彗星」は細長い楕円軌道を回っています。周期彗星のうち太陽に近づく周期が200年以内のものを短周期彗星、200年以上のものを長周期彗星と呼びます。また、1度だけ太陽に近づいてそのまま太陽系のかなたに消えていく彗星もあります。

 多くの彗星はいつどこに現れるのか予測がつきません。太陽に近づいて明るく光りはじめてから、やっと発見されることもしばしばです。
 20世紀後半に現れた大きな彗星には、
写真の4つの彗星や、IRAS・荒貴・オルコック彗星(1983年発見)などがあり、なかでも1995年に発見されたヘール・ボップ彗星は、抜群に大きい彗星で、肉眼でもよく見えました。

彗星の正体

イオンテイル、ダストテイル

 彗星の本体は、「よごれた雪だるま」のようなもので、「核」と呼ばれます。太陽から遠いときには核は凍りついていますが、太陽に近づくと、太陽の熱で蒸発しはじめ、チリやガスを吹き出します。
 核のまわりに広がったチリやガスの雲を「コマ」といい、半径10万kmから数十万kmにも広がります。コマは太陽に近づくにつれて大きくなり、彗星はしだいに明るく光ります。
 さらに太陽に近づくと、コマのチリやガスが太陽風や光の圧力に飛ばされてのびていきます。これが彗星の尾です。彗星の尾は必ず太陽の反対側にのびます。彗星の進行方向ではありません

 尾には、ガスの尾(イオンテイル)と、チリの尾(ダストテイル)があります。ガスの尾はイオン化した一酸化炭素や水蒸気からできており、細くまっすぐにのびていきます。
 チリの尾は、ゆるやかにカーブしてのびていきます。チリの尾のほうが幅広くくっきりしているため、核にチリを多く含む彗星ほど尾が立派になります。
 何回も太陽に接近した彗星は、蒸発するものがなくなってひからびてしまうので、光り輝くことはありません。このような彗星の残りかすは、小惑星の一種として観測されていると考えられています。

 夜空にとつぜん現れる彗星は、どこからやってくるのでしょうか?
 彗星のふるさとには、ふたつの領域が考えられています。ひとつは、海王星の外側に広がる「エッジワース・カイパー・ベルト」です。もうひとつは、太陽系の果てで太陽系を丸く包んでいるといわれる「オールトの雲」です。
 どちらも、彗星の核になる小天体が無数に浮かんでいると考えられています。そのなかで、何らかの重力の影響を受けたものが太陽系内部に向かいはじめ、太陽に近づいて彗星になるといわれます。

太陽系天体がよくわかる「太陽系ビジュアルブック」

太陽系ビジュアルブック

 「太陽系」という言葉を聞いて、多くの方が最初に脳裏に浮かべるのは、「太陽の周りを地球や火星や木星などたくさんの惑星がぐるぐると回っている」というイメージでしょう。しかし、太陽系についてもう一歩踏み込んだ内容となると、宇宙や天文の専門家や興味をもって勉強された方を除いて、一般には意外に知られていないというのが現状のようです。

 「太陽系ビジュアルブック」では、基本的な事柄はもちろんのこと、「土星以外にもリングのある惑星がある」、「天王星は横倒しになって公転している」、「水星は1日が1年より長い」、「木星はガスでできている」、「火星には太陽系最大の火山と渓谷がある」、「太陽系の領域の半径は一光年くらいある」、「彗星の正体は汚れた雪だるま」、「水星表面の55%はどんな地形かわかっていない」といった思いがけない事実についても、くわしく解説しています。