キュリオシティ、新しい方法で火星の岩石を掘削
【2018年5月30日 NASA JPL】
NASAの火星探査車「キュリオシティ」は2012年に火星に着陸し、地表を走行して移動しながらところどころで岩石や土壌のサンプルを採取して調査を行ってきた。しかし2016年12月に岩石を掘削するためのドリルが故障し、それ以降はドリルが使えない状態になっていた。
キュリオシティはもともと、ドリルの左右に付いている指のような安定装置を岩石に押し当ててドリルを出し入れし、岩石を掘削する仕組みであったが、その出し入れができなくなってしまったのだ。何とかしてドリルを「出しっぱなし」の状態にすることには成功したものの、安定装置は使えないままである。
キュリオシティのドリル部分。(左)安定装置よりもドリルが縮んだ状態、(右)安定装置よりもドリルを伸ばした状態(新しいサンプル採取方法の紹介動画より)(提供:NASA JPL)
そこでキュリオシティの運用チームでは、ドリルが付いているキュリオシティのロボットアームそのものでドリルを岩石に押し付けるという方法を使うことにした。ちょうど人間が電動ドリルを使うのと似たようなやり方だ。
キュリオシティのドリルを使った新しいサンプル採取方法の紹介動画(提供:NASA JPL)
5月20日にキュリオシティはこの新しい方法を実行し、「Duluth(ダルース)」と呼ばれる岩石に深さ約5cmの穴を開けることに成功した。ドリルで掘った火星のサンプルが1年以上ぶりに得られたことになる。「研究チームが創意工夫して考案した新しい掘削技術が実施されました。試験の大成功に感激しています」(キュリオシティ副プロジェクトマネージャー Steve Leeさん)。
深さ約5cmの穴が開けられたDuluth(提供:NASA/JPL-Caltech/MSSS)
今後も研究チームではドリルの使用の試験を重ね改良を続けていく。また、削られた岩石のサンプルがどれほどの量かを見積もり 、ドリルを逆回転させたり振動させたりしてサンプルをドリルの先端から探査車内にある分析装置へと運ぶ作業も行われる。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- キュリオシティ(Mars Science Laboratory)
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