太陽系外縁天体の地下海は潮汐加熱で延命

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太陽系外縁天体の地下海の寿命が、衛星との重力作用で起こる潮汐加熱によって延ばされている可能性を示す研究結果が発表された。

【2017年12月8日 NASA

太陽系の外側、海王星よりも遠いところには、冥王星やその衛星「カロン」をはじめとする「太陽系外縁天体(TNO)」が多数存在している。これらの天体の表面温度は摂氏マイナス200度以下で極低温の氷の世界だが、これまでの探査から、凍った表面の下に液体の層がある可能性を示す証拠が得られている。天体の密度が地下海の存在する他の天体と似ていることに加えて、天体からの反射光の分析により水の氷とアンモニア水和物が存在する兆候が見られたからだ。これらの物質は低温環境や宇宙線の影響のため表面に長く存在できないはずであり、それらが見られるということは地下から氷火山活動によって噴出したと考えられる、つまり地下に液体があるかもしれない、という考えである。

冥王星の氷火山らしき地形のライト山
冥王星の氷火山らしき地形のライト山(提供:NASA/JHUAPL/SwRI、以下同)

太陽系外縁天体の内部で氷火山活動を生み出す熱源は、ほとんどが放射性元素の崩壊によるものだ。その熱は氷の層を溶かすには十分で、数十億年間にわたり地下海を保つ可能性があるが、いずれは崩壊が止まって熱がなくなり、地下海も凍ってしまうはずである。

NASAゴダード宇宙センターのPrabal Saxenaさんたちの研究チームは、太陽系外縁天体と衛星との間に生じる重力的な相互作用によって天体内部に追加的な熱が生成され、これにより地下海の寿命をかなり延ばせる可能性をシミュレーションで示した。

冥王星(右)と衛星「カロン」(左)
冥王星(右)と衛星「カロン」(左)

衛星の誕生プロセスの一つは天体同士の衝突で飛び散った破片が重力によって集まるというものだが、このような衝突を経て作られた衛星の軌道は不安定なものとなる。衛星の軌道が安定し、地球の月のように常に同じ面を主星に向けて公転するようになるまでの間で、主星と衛星の両方には重力的な相互作用によって伸び縮みが生じ、天体内部で摩擦による潮汐加熱が起こる。Saxenaさんたちの研究は、この熱の影響を実在の太陽系外縁天体や仮想的な天体に対して計算したものだ。

研究チームはさらに、潮汐加熱や放射性元素の崩壊熱によって地下海に、生命の発生現場やエネルギー源となる熱水噴出孔が形成される可能性も指摘している。「太陽系外縁天体は、可能性を秘めた水と生命の宝庫と考えられるべきです。私たちの研究結果が正しければ、太陽系内に地球外生命体にとって重要な要素を持つ場所はもっと多く存在しているかもしれません」(Saxenaさん)。

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