火星探査車「エクソマーズ2020」の着陸候補地点が決定
【2017年3月31日 ヨーロッパ宇宙機関】
「エクソマーズ」は、ヨーロッパ宇宙機関とロシア・ロスコスモスによる火星探査ミッションだ。現在すでに探査機「TGO」が火星を周回しながら探査を行っているが、2020年には火星探査車が打ち上げられる予定になっている。その着陸候補地点として、「オクシア平原(Oxia Planum)」と「マゥルス峡谷(Mawrth Vallis)」が選ばれた。最終決定は打ち上げ約1年前に行われる。
ExoMarsの探査車の想像図(提供:ESA/ATG medialab)
両候補地は赤道のすぐ北にあり、多くの河床が南の高地から北の低地に向かって伸びている。そこには、数十億年前の火星の水に関する地質学的な歴史の記録が豊富に保存されていると期待される。過去の火星に存在したかもしれない生命の兆候を探すには、最も重要なターゲットといえる。
オクシア平原は、干上がってできた多くの河床からなる広く低い平原の境界に位置し、粘土の豊富な鉱物の層が見えている。それらの鉱物は39億年前に、湿った環境で形成されたものだ。
オクシア平原。青い楕円内に着陸予定。地図の色は地形の高さに応じており青いほど低い(提供:ESA/DLR/FU Berlin & NASA MGS MOLA Science Team、以下同)
火星周回軌道上からの探査により、オクシア平原の鉱物は周辺の広大な範囲に見られるものの代表であることがわかっている。つまり、過去に火星全体が経験したであろう環境についての情報が得られると考えられている。
もう一方のマゥルス峡谷は、オクシア平原から数百km離れた巨大な河川地形だ。領域全体にわたって、粘土の豊富な何層もの堆積物や、数億年間持続的に水が存在していたことを示唆する様々な鉱物が見られる。さらに、水で変質した鉱物の明るい色調の割れ目は、地表下の帯水層にある岩石と液体の相互作用や古代の生命体に有益な水熱活動の可能性を示唆している。
マゥルス峡谷
マゥルス峡谷は長期間にわたる火星の歴史を覗く窓であり、時と共に変化していった火星の初期環境の進化について調べることができるかもしれない。
〈参照〉
- ヨーロッパ宇宙機関: Final two ExoMars landing sites chosen
〈関連リンク〉
- エクソマーズ: http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/ExoMars
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー: 火星
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