2015年 天文宇宙ゆく年くる年

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春の皆既月食、夜明けの惑星集合、好条件の流星群と気軽に楽しめる見どころの多かった2015年。皆さんの心に残ったのはどの星空だろうか。今年の天文宇宙の話題を簡単に振り返るとともに、2016年注目の天文イベントも紹介。

【2015年12月28日 アストロアーツ】

2015年前半の注目は4月4日の皆既月食。昨年10月の皆既月食に続く好条件もさることながら、夜桜と赤い月のツーショットも話題を集めた。

夜桜と皆既月食の2ショット
4月4日、夜桜と皆既月食の2ショット。クリックで投稿ギャラリーのページへ(撮影:あるでばらんさん)

月食を見せてくれながらも流星群の夜にはそっと身を退く、月がとても天文ファンに優しかった今年。8月のペルセウス座流星群12月のふたご座流星群は月明かりのない好条件だったが、こんな時に限っていまいち好天に恵まれず、な地域も多かった。だがほぼ毎年安定して見られる流星群なので、また来年に期待しよう。

ペルセウス座流星群
大分市でとらえたペルセウス座流星群。クリックで投稿ギャラリーのページへ(撮影:いわたさん)

ふたご座流星群
弘前市で撮影されたふたご座流星群。クリックで投稿ギャラリーのページへ(撮影:きる2015さん)

雲に阻まれることなくいつでも星を見放題の宇宙からは、ISS長期滞在クルーの油井亀美也さんがツイッターで「究極の星景写真」を送り届けてくれた。もちろんこれは宇宙飛行士としての本業ではなく、「きぼう」での実験や「こうのとり」5号機の運用などで活躍。初のミッションを見事に成功させ、12月11日に地上に帰還した。来年は大西卓哉さんがISSに長期滞在する予定だ。

ISSから撮影した地球大気と月
ISSから撮影した地球大気と月(油井さんのツイッターより)

「こうのとり」5号機で届けられたフルーツを浮かべる油井さん
「こうのとり」5号機で届けられたフルーツを浮かべる油井さん(提供:JAXA)

昨年末、宇宙飛行士でもプロの天文学者でもない、あの「達人」が節目となる偉業を達成。山形の超新星ハンター・板垣公一さんが昨年12月13日に自身100個目となる超新星を発見した。2015年もさらに14個の超新星を見つけ、通算114個となった。来年もどこまで記録を伸ばすのか注目だ。

板垣さん100個目の超新星となったSN 2014ef
板垣さん100個目の超新星となったSN 2014ef(撮影:板垣公一さん)

達人でなくても楽しめるのが、明け方の明るい惑星たち。秋には金星+火星+木星が狭い範囲で接近していた。さらにこの年末には土星も加わり、来年1月までにぎやかな空が楽しめる。

明け方の5惑星
10月12日に撮影された明け方の5惑星。クリックで投稿ギャラリーのページへ(撮影:笹岡省三さん)

12月7日にはこの空の中で、明けの明星に日本の探査機「あかつき」が到着。5年ごしの再チャレンジで見事金星の周回軌道に乗り、謎の惑星の姿を間近から明らかにする。

その直前、12月3日には探査機「はやぶさ2」が地球の重力と公転運動を利用した「スイングバイ」を行った。空の中を素早く動くかすかな姿を見事にとらえた画像はTVニュースなどでも大きく取り上げられた。あらたに名前が決定した小惑星「リュウグウ」へと向かう本格的な軌道に乗り出した「はやぶさ2」。どんなお宝の入った“玉手箱”を持ち帰ってくれるのか、今から楽しみだ。

「あかつき」がとらえた金星の紫外線像
金星周回軌道投入のためのエンジン噴射数時間後に「あかつき」がとらえた金星の紫外線像。こうした画像から、硫酸雲の形成に関わる二酸化硫黄などの循環のようすがよくわかる(提供:JAXA) 地球スイングバイを行った「はやぶさ2」の軌跡
12月3日に地球スイングバイを行った「はやぶさ2」。その軌跡が各地でとらえられた。クリックで投稿ギャラリーのページへ(撮影:船橋弘範さん)

小惑星ベスタに引き続き準惑星ケレスの観測を開始したNASAの「ドーン」や、太陽に最接近したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の活動のようすを現地から伝えた欧州の「ロゼッタ」など、日本のみならず各国の探査機の活躍が目立った年でもある。なんといっても今年最大の話題はNASAの「ニューホライズンズ」だろう。一夜限りの冥王星フライバイ観測に成功し、初めて見る元・惑星の驚くべき姿を明らかにした。フライバイ時に取得したデータは現在でも少しずつ送られている途中で、そのデータから太陽系の歴史が解き明かされていくことだろう。

ニューホライズンズがとらえた冥王星
冥王星最接近直前の7月13日に「ニューホライズンズ」がとらえた画像は、印象的なハートマークとともに「今年の1枚」といっても過言ではないだろう(提供:NASA/APL/SwRI)

今年度のノーベル物理学賞はニュートリノの質量があることを見出した梶田隆章さんとカナダのArthur B. McDonaldさんが受賞し、梶田さんらによるスーパーカミオカンデでの実験や素粒子物理学についての解説がTVや紙面などで大きく取り上げられた。日本人研究者の受賞が毎年のように報じられるノーベル賞発表は、今やサイエンスに親しむ秋の風物詩と言えるのかもしれない。

ノーベル物理学賞を受賞した梶田さんとMcDonaldさん
(左)梶田隆章さん、(右)Arthur B. McDonaldさん(出典:ノーベル財団のリリースより、梶田隆章さん/K. MacFarlane. Queen's University /SNOLAB)

2015年の訃報

  • 小尾信彌 氏(2014年9月28日。89歳)
    天文学者。東京大学名誉教授、放送大学元学長 関連ニュース
  • 西村有二 氏(5月8日。68歳)
    西村製作所 代表取締役社長 関連ニュース
  • 吉田正太郎 氏(7月30日。102歳)
    天文学者・光学設計者 関連ニュース
  • 南部陽一郎 氏(7月5日。94歳)
    素粒子物理学者。2008年ノーベル物理学賞を受賞 関連ニュース
  • 比嘉義裕 氏(9月3日。50歳)
    天文ライター。「星ナビ」にてレポ・論考記事多数執筆。
  • 宮本幸男 氏(9月18日。93歳)
    熊本県民天文台台長、清和高原天文台台長。

改めてその業績を偲び、哀悼の意を表します。


2016年は部分日食に火星接近、アルデバラン食

2016年初日の出特集

2016年は、3月9日に全国で見られる部分日食、5月31日の火星最接近、年内に5回起こるアルバラン食などが注目の天文イベントとなる。天文ファン以外も話題にするような派手な現象は少ないものの、日々の星々の中にひそむ宝物をじっくりと探す、そんな年にしてみるのもよいだろう。

部分日食
3月9日11時9分ごろ、東京で最大食のころのようす。必ず日食めがねなどを使って観察しよう(ステラナビゲータで星図作成

アストロガイド 星空年鑑 2016 2016年の星空をPCソフト、冊子、DVDムービーで一挙紹介するムック「アストロガイド 星空年鑑 2016」。画像クリックで製品ページへ


アストロアーツの2015年

おかげさまでアストロアーツウェブサイトは20周年月刊「星ナビ」は15周年を迎え、オンラインショップでの記念セールもご好評をいただきました。6月19日に天体撮影ソフトウェア「ステラショット」が、12月23日にはニコンに追加対応した「ステラショット1.2」も発売されました。

天体撮影ソフトウェア「ステラショット」 天体撮影ソフトウェア「ステラショット」。画像クリックで製品ページへ

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