貧弱な矮小銀河の内部でパワフルな星形成

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アルマ望遠鏡で天の川銀河に近い矮小不規則銀河を観測したところ、その内部にコンパクトな星間分子雲の群れが見つかった。星の材料が豊富とはいえない矮小銀河で密集した星団が作られる理由の解明につながる研究成果だ。

【2015年9月16日 アルマ望遠鏡

WLM(ウォルフ・ルントマルク・メロッテ)はくじら座の方向約300万光年彼方にある矮小銀河で、局部銀河群(天の川銀河、大小マゼラン雲、アンドロメダ座大銀河M31、さんかく座M33、および数十個のより小さな銀河を含む銀河の集団)の外縁に、比較的孤立して存在している。

チリ大学モニカ・ルビオさんたちの国際研究チームはアルマ望遠鏡を用いてWLMを観測し、大きな銀河で星が形成される環境と同等の星形成能力を持つ小さな領域を発見した。星形成を行う星間分子雲で一酸化炭素分子が放出する電波をとらえることによって見つかったものだ。

ブランコ4m望遠鏡で撮影されたWLMの可視光画像と、VLA望遠鏡とアルマ望遠鏡がとらえた水素ガス、一酸化炭素分子
ブランコ4m望遠鏡で撮影されたWLMの可視光画像。四角内では、全体を覆う水素ガス(赤色:米国国立電波天文台のVLA望遠鏡)の毛布によって、一酸化炭素分子(黄色:アルマ望遠鏡)を濃縮するために必要な圧力がもたらされている(提供:B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); M. Rubio et al., Universidad de Chile, ALMA (NRAO/ESO/NAOJ); D. Hunter and A. Schruba, VLA (NRAO/AUI/NSF); P. Massey/Lowell Observatory and K. Olsen (NOAO/AURA/NSF))

これまでWLMや同様の銀河では、その中に見られる新しい星団の量に比べて材料となる物質がじゅうぶんに観測されていなかった。今回の観測から、WLMでは比較的密度の高い一酸化炭素の雲がその周囲を取り囲む原子・分子の薄い雲に比べて非常に小さいという、通常の銀河とは異なる特徴が明らかにされた。このコンパクトさのために一酸化炭素の観測が難しかったというわけだ。

濃縮された一酸化炭素の雲から多くの星が誕生するためには、その周りにある巨大で希薄なガスから圧力を受けている必要がある。まさにそうした領域を発見したことにより、銀河中に見られる印象的な星々が誕生するメカニズムがわかった。

今回の発見や今後の観測はさらに、天の川銀河の周縁部(ハロー)に分布する球状星団の形成条件の解明にも役立つのではないかと期待されている。大規模な星団は、元は矮小銀河で形成され、母体となる矮小銀河が分散してしまった後にハローへと移動したかもしれないと考えられているからである。

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