変光星いて座RYが急激に減光中
【2022年10月3日 高橋進さん】
9月26日、宮城県仙台市の小野寺紀明さんから、VSOLJメーリングリスト(変光星観測者の情報交換用メーリングリスト)に「RY Sgr(いて座RY)が減光を起こしてきているようだ」との書き込みがありました。
いて座RYは、かんむり座R型変光星として有名な星です。このタイプの変光星では恒星から炭素を多量に含んだガスが噴出し、このガスが塵になって恒星を覆い隠すことにより暗くなるという現象を起こします。恒星からガスを噴出して変光する星を大きくまとめて「爆発型変光星」と呼びますが、かんむり座R型変光星は噴出によって暗くなってしまうという、ちょっと変わった変光星なのです。
かんむり座R型変光星はこれまでに100個ほど発見されていますが、いて座RYはその中でも2番目に明るい星です。普段は6等くらいで光っていますが、数年~10年ほどで突然減光を起こします。減光が始まると、数日に1等級くらいという速さでみるみる暗くなっていき、時によっては13~14等くらいにまで暗くなります。
いて座RYの2019~2022年の光度(VSOLJメーリングリストのデータから高橋さん作成)
今回の減光は実際には8月初めくらいから始まりのきざしがあったようですが、30~40日くらいの周期で変光幅1等級くらいの変光が普段からあるため、それほど目立ちませんでした。しかし9月中旬くらいから減光の様子が顕著になり、これは観測を呼びかけなくてはと小野寺さんがメーリングリストに急いで投稿されたのでした。9月26日の小野寺さんの観測では9.4等にまで減光していましたが、9月21日には8.0等だったので5日間で1.4等も減光したことになります。
いて座RYが今後どれくらいまで暗くなるか、非常に興味深いところです。南の低い天体ですが、南斗六星やみなみのかんむり座を目印にして位置の見当をつけることができるでしょう。この機会にぜひ、多くの皆さんの観測をお願いいたします。
いて座RY周辺の星図。数字は恒星の等級(69=6.9等)を表す。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)
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