NASAの火星探査車「パーサビアランス」着陸成功
【2021年2月19日 NASA/NASA Blog(1)/(2)/(3)】
パーサビアランス(Perseverance)はNASAが火星に送り届けた5台目の探査車で、2012年に着陸したキュリオシティ(現在も運用中)以来の新ミッションとなる。2020年7月30日(日本時間、以下同)に打ち上げられ、太古に水が豊富に存在した証拠があるジェゼロクレーターを目指して航行していた。
大気圏突入から着陸に至るまでのプロセスは、キュリオシティとほぼ同じものが使われている。これは、熱シールドに守られながら大気圏に突入し、次いでパラシュートを展開、そして最後に「スカイクレーン」と呼ばれる装置で吊り下げるという3段階で減速しながら、目的の地点に探査車を着陸させる手法だ。一連の過程は7分掛かるが、地球との通信には片道でも10分を要するため、装置の自律稼働に任せるしかない。キュリオシティという成功例があるとはいえ、関係者はこの時間を「恐怖の7分間」と呼ぶほどである。
パーサビアランスがスカイクレーンに吊るされながら着陸する瞬間の想像図(提供:NASA/JPL-Caltech)
パーサビアランスの運搬機は2月19日午前5時48分ごろに、時速約2万kmで火星の大気圏へ突入した。その約4分後にパラシュートを開いて時速約300kmにまで減速し、さらに上空2kmでスカイクレーンがエンジンを噴射して機体を安定させた。
地表からの高度約20mに達したところで、3本のケーブルを伸ばして全長3mの探査車を着陸させる段階に入った。タッチダウンを目前に緊張がピークに達していたNASAジェット推進研究所管制センターでは、「As expected, as expected !(予定通り、予定通りだ)」という緊張して見守る声があがり、5時55分に「Touchdown confirmed(タッチダウンを確認)」のアナウンスが流れ、一気に喜びに沸いた。
着陸成功の喜びに沸いた管制センターの様子(提供:NASA)
6時0分には早速、パーサビアランスから火星でのファーストショットが届き、管制センターのモニターに映し出された。
パーサビアランスが着陸直後にとらえた初画像(カメラは塵を避けるためのカバーが取り付けられた状態にある)。パーサビアランスの探査対象となる岩石が複数写っている(提供:NASA/JPL-Caltech)
パーサビアランスが降り立った直径約45kmのジェゼロクレーターは、火星のイシディス平原の西端に位置している。同クレーターは、約35億年前には川が流れ込んで水をたたえていたと考えられ、微生物に適した環境が存在した可能性が高い。今後約2年かけて行われる探査で、パーサビアランスは7つの観測機器を用いてクレーター内の岩石や土の特徴を調べ、微生物の痕跡を探る。また約30点の岩石サンプルを回収する予定で、2031年以降に欧米合同ミッションによってサンプルが地球へ持ち帰られることになっている。
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