インサイトから届いた火星の風の音とセルフィー
先月末に火星に到着したNASAの探査機「インサイト」が、12月1日に、火星の風の音を記録した。インサイトがとらえたのは、秒速5~7mの北西の風で生じた振動による音で、2つの機器によって記録されている。
インサイトがとらえた火星の風の音を聞くことができる動画「Sounds of Mars: NASA’s InSight Senses Martian Wind」。1つ目は地震計がとらえた生の音、2つ目はそれを2オクターブ上げて聞きやすくしたもの、3つ目は気圧センサーがとらえた振動を100倍速にして周波数を上げたもの(提供:NASAジェット推進研究所)
一つは、気象に関わるデータを集める観測機器「APSS」の一部である気圧センサーで、空気の振動を直接とらえている。
もう一つは、観測機器「SEIS」がとらえた振動で、風でインサイトの太陽電池パネルが揺れたことによって生じたものである。SEISは本来は「火震」(火星の地震)を調べるための機器だ。今後はロボットアームによって探査機から離れたところに設置されるため、探査機の振動による音を記録できるチャンスは今だけしかない。
また、12月6日にインサイトがロボットアームを使って撮影したセルフィー(自撮り画像)も公開された。11枚の画像をつなぎ合わせて作られたもので、太陽電池パネルや観測機器を載せたデッキ全体が写っている。
12月6日に撮影されたインサイトのセルフィー(提供:NASA/JPL-Caltech)
ミッションチームは今後数週間かけて、SEISと熱流量測定装置「HP3」を設置するのに適した、平らな場所の検討を行う。「岩石や土の盛り上がり、穴などがほとんどないので、ここ(インサイトの前に広がる平地)は装置を設置するにはとても安全な場所でしょう。これが火星の画像でなければ、何もないただの地面の一部にしか見えないかもしれません」(インサイト主任研究員 Bruce Banerdtさん)。
もともと、エリシウム平原が着陸地点として選ばれたのは岩が少ないことが理由だが、この場所は砂で埋まった窪地でもあり、HP3が観測のため地下を深く掘るのにも適しているとみられている。SEISやHP3の観測によって得られる火星の内部の情報から、火星だけでなく地球や月といった天体の理解も深まると期待されている。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- インサイト
- Mars2020
- NASA火星探査ミッション
- アストロアーツ:
- 星ナビ2018年7月号 火星観測ハンドブック付録、火星探査の歴史を大特集
- 【特集】火星大接近(2018年7月31日 地球最接近)
- 天体写真ギャラリー:2018年 火星
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