ステラナビゲータ 20周年

ステラナビゲータ 20のトリビア

「ステラナビゲータ」では、星図の描画、計算などさまざまな部分において開発者の「こだわり」が発揮されています。そのこだわりを「トリビア」として、連載形式でご紹介します。

No. 11「どうなるアイソン彗星」

ステラナビゲータの彗星は、向きや形だけでなく、見た目もひじょうによく再現している。
Yes or No?

彗星の描画の比較

彗星の描画の比較
(左)Ver.9.1以前/(右)Ver.9.2以降

Ver.9.2aから搭載された「テイル編集」ダイアログ

Ver.9.2aから搭載された「テイル編集」ダイアログ

彗星の尾は、イオンが主成分のイオンテイルと、ダスト(塵)が中心のダストテイルの2種類があります。彗星の核から放出されたダストやイオンは、太陽風にあおられて彗星の核から離れていきます。これらのダストやイオンなどに太陽の重力、太陽光による光圧、彗星の移動速度、太陽風などが作用して、彗星とともに太陽の周りをめぐります。このときのダストなどの性質の違いで、いろいろな尾を見せてくれます。

ステラナビゲータでは初代のDOS版からダストテイルとイオンテイルを別々に計算し、彗星の尾の向きや長さを正確に再現させることで、気軽な星空ファンだけでなく彗星観測者や天体写真愛好家の間でも高い評価を受けてきました。

ただし、写真や肉眼で見る彗星の形とは、ちょっと違っているのが長年の懸念事項でした。彗星の頭の部分は丸くなっているのですが、計算ではイオンもダストも核の一点から放出されることを前提にしているので、尖ったほうきのようにしかならなかったのです。そこにコマを加えても、実際とはちょっと違いますよね。

そこでVer.9.2で計算方法などを見直して、実際の彗星の形に近づくようにしました。彗星の頭の部分は、核から放出されたダストやイオンが取り巻いています。ここからなめらかに伸びている尾につながるように実際の彗星の立体モデルを作るようにしたことで、実物に近い形を再現できるようになりました。これまでの彗星の尾は軌道面に沿った二次元でしか再現できなかったのですが、このように立体のモデルに改良したことで、どの方向からも尾の広がりを見ることができるようになりました。

また、尾の形を再現するパラメータにも手を加えています。従来は、ダストテイルを実長とβmaxで、イオンテイルを実長で指定していました。今回は、研究用にも使えるように、ダストやイオンの放出期間を指定できるように変更しました。またβの値もmaxとminの両方を指定できるようになっています。さらに、彗星の日心距離に応じて尾の長さを調整するようにしたので、太陽に近づくにつれて尾が長くなっていく様子も再現しています。また、地球軌道より内側に来ると、太陽の熱によって尾が短くなるようにしてあるので、サングレーザーもきれいに再現します。2013年10月に公開したVer.9.2aでは、尾のパラメータを調整するダイアログが追加されました。

このように精密な尾のシミュレーションができるようになったことで、写真から尾のパラメータを解析することもできます。ステラナビゲータに彗星の画像を貼り付けて、画像中の尾に合うようにパラメータを決めていけば、彗星の尾の物理パラメータを推定することができます。

彗星の尾についてはまだまだわかっていない事も少なくないようですが、今後も随時改良を続けて、研究や観測に役立つステラナビゲータを目指します。

(haru-k)

Yes
ステラナビゲータでは、彗星の尾の見た目もよく再現できる(Ver.9.2以降)。