川で知る、地球・火星・タイタンの地形の歴史

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現在または過去に地表に液体が存在していた3天体、地球と火星、タイタンについて、地形図の比較から地形の歴史が調べられた。

【2017年5月23日 MIT News

土星の衛星「タイタン」は地球以外で唯一の、地表に液体が大量に存在する太陽系天体である。また、過去には火星の表面にも大量の水があったと考えられており、川が流れた跡のような地形が見られる。

米・ニューヨークシティカレッジのBenjamin Blackさんたちの研究チームは地球と火星、タイタンにおける川の流れ方を比較し、地形の歴史を調べた。そして、火星とタイタンの歴史は地球とは大きく異なることを明らかにした。

火星、地球、タイタンの河川網
(左から順に)火星、地球、タイタンの河川網(提供:Benjamin Black/NASA/Visible Earth/JPL/Cassini RADAR team. Adapted from images from NASA Viking, NASA/Visible Earth, and NASA/JPL/Cassini RADAR team)

Blackさんは探査機「カッシーニ」の観測によるデータからタイタンの地図を作成し、地球と火星のものと比べた。その際、タイタンの厚い大気の影響で解像度の高い地図が作れず、大きい構造しか見えなかったため、地球や火星の詳細な地図の解像度を落として比較が行われた。

こうして川の流れの方向などを調べたところ、火星とタイタンがよく似ており地球には似ていないことがわかった。プレートテクトニクスによって地面が隆起すると川の流れが変えられてしまうが、火星とタイタンの河川網ではそうした兆候が見られず、比較的近い過去に活発なプレートテクトニクスによる地殻変動が起こっていなかったことを示していると考えられる。

Blackさんたちによると、タイタンの地形を作り出したのは、土星からの潮汐力によりタイタンの凍った地殻の厚みが変化するというプロセスによるものである可能性が示唆されている。また、火星上の地形のほとんどは原始的成長期や、多くの小天体が惑星に衝突し盆地を作ったり火山を押し上げたりした「後期重爆撃期」に形成されたと考えられている。シミュレーションによれば、火星の歴史の最初期に最大の衝突クレーターが作られ、その後に小惑星によって表面が凹まされ地形が作られていったようだという。

「現在あるいは過去において、川が流れる世界が太陽系に3つ存在するのは驚くべきことです。より詳細なタイタンの地形図が手に入れば、その地形は地球より火星に似て見えると予想します。絶えず新しい山脈が出現しては川がそれに対抗する地球のような環境とは対照的に、タイタンの地形はしばらく前に作られた後、川の流れによる浸食で削られ続けてきたのです」(米・マサチューセッツ工科大学 Taylor Perronさん)。