木星の衛星を新たに12個発見、計92個に

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すばる望遠鏡などを用いた観測から、木星の衛星が新たに12個発見された。木星の衛星の数はこれで計92個となり、土星の83個を上回って太陽系最多となった。

【2023年2月15日 すばる望遠鏡カーネギー研究所

2022年末までの時点で、報告されている衛星の数が一番多い惑星は、疑わしいものを除いても83個の衛星を持つ土星だった。だが、米・カーネギー研究所のScott Sheppardさんたちの研究チームが、木星の周りをすばる望遠鏡などで観測して12個の衛星を発見したため、木星の衛星数が92個となった(92個のうち72個に衛星番号が付けられて確定しており、57個に名前が付いている)。

「これまで4年余りにわたって、土星が太陽系の『衛星の王者』として君臨してきましたが、私たちの発見が国際天文学連合の小惑星センターに認定されたことで、土星はその座を追われることになりました」(Sheppardさん)。

研究チームは、太陽系外縁部に存在するという仮説のある第9惑星を、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」などを使って探査している。2021年と2022年にはその探査領域の近くに木星が位置していたため、衛星の捜索が行われた。2021年9月にはすばる望遠鏡で、2022年8月にチリのセロ・トロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡で衛星が見つかり、チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡によって軌道が確認された。

木星の衛星の軌道
既知の木星の衛星のうち、84個の軌道。左図と右図は、それぞれ木星の極方向から見た場合と赤道方向から見た場合を表す。グレー(一番内側)、ピンク、黄色、青、水色、緑、赤の線はそれぞれ、アマルテア群、ガリレオ衛星、テミスト、ヒマリア群、カルポ、バレトゥードー、逆行衛星の3グループ(アナンケ群、カルメ群、パシファエ群)の衛星の軌道。今回は、ヒマリア群に2個、カルポと同様の軌道を持つ1個、アナンケ群に3個、カルメ群に5個、パシファエ群に1個、計12個の新衛星が発見された(提供:Carnegie Institute, Scott Sheppard、以下同)

今回報告された12個の衛星は、いずれも直径が3km以下の小さな天体だ。現在も研究チームは、多くの木星と土星の衛星候補を追跡中で、その正式な確認には丸1年の観測が必要だという。「私たちの探査では、直径1km以上の木星の衛星全ての検出が可能と見積もっています。木星の周りには、そのような天体が100個以上あります。木星の衛星として正式に発表するために、現在も多くの候補天体を追観測しています」(Sheppardさん)。

木星の衛星のうち、ガリレオ衛星より外側にあるものは、軌道の特徴によって7つのグループに分けられている。それらは、かつて存在した7つの大きな衛星が、それぞれ別の天体との衝突で破壊されたことで生まれたのだと考えられる。つまり、こうした外側の衛星は巨大惑星の領域で形成された天体の名残であり、惑星の形成と進化を理解する上で重要な存在であるというわけだ。

「今後、ヨーロッパ宇宙機関(とJAXAなど)の木星氷衛星探査計画『JUICE』や、NASAの探査機『エウロパ・クリッパー』が木星周辺に到達した際に、小さな衛星のどれかをクローズアップで撮影できるのではないかと期待しています。そうすることで、生まれたての太陽を取り囲んでいたガスと塵の円盤から巨大惑星が形成された過程を理解する手がかりが得られることでしょう」(Sheppardさん)。

木星の外側衛星7つのグループの軌道長半径と軌道傾斜角
木星の衛星のうち、外側の7つのグループの軌道長半径(横軸)と軌道傾斜角(縦軸)。黄色、青、水色、緑、赤は、それぞれテミスト、ヒマリア群、カルポ、バレトゥードー、逆行衛星の3グループ(アナンケ群、カルメ群、パシファエ群)を表している

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