球状星団の“消えた”星、実は元からなかった?
【2014年12月9日 ESA/Hubble】
天の川銀河の中心付近に多く分布する球状星団は、主に古い星がたくさん集まった天体だ。1つの星団の星はすべて一斉に生まれたものとかつては考えられていたが、近年の研究から、天の川銀河内の多く球状星団にはそれぞれ2世代以上にまたがる星が含まれることがわかってきた。
これらの星団内では、親世代の星と窒素が豊富な子世代の星がおよそ半々ずつを占めているが、理論予測に沿うなら親世代の星の割合はもっと多いはずだ。
この食い違いの要因については、「親世代の星が過去にごっそりと星団から出ていった」というのが有力な説である。古い星が銀河円盤部を球状に取り囲んでいる(ハローの部分がある)天の川銀河の場合は、追い出された星がハローの星々に紛れ込んだとすれば容易に説明がつく。
では天の川銀河以外ではどうだろうか。オランダ・ラットバウト大学のSøren Larsenさんらが天の川近傍の「ろ座矮小銀河」にある4つの球状星団をハッブル宇宙望遠鏡で観測したところ、これらの星団は天の川銀河の星団と同じように複数世代の星から成り、さらに子世代の星を示す窒素の割合も同様に大きいことがわかった。
ろ座矮小銀河の4つの球状星団(提供:NASA, ESA, S. Larsen (Radboud University, the Netherlands))
だが、ろ座矮小銀河には追い出された星のその後を示すような古い星が少なく、「親世代の星が星団を離脱した」説を当てはめることができない。
「星団を出て行った星があるなら観測できるはずですが、どこにもないんです!」と研究チームのFrank Grundahlさん(デンマーク・オーフス大学)は話す。「星団を離れた星々が隠れる場所はろ座矮小銀河にはありません。星団にもっとたくさんの星があったというわけではなさそうです」。
天の川銀河内のものも含め、1つの球状星団にどのようにして複数世代の星が存在するのか。その過程に見直しが迫られている。
〈参照〉
- ESA/Hubble: The riddle of the missing stars
- The Astrophysical Journal: Nitrogen abundances and multiple stellar populations in the globular clusters of the Fornax dSph 論文
〈関連リンク〉
- ESA.Hubble: http://www.spacetelescope.org/
- アストロアーツ
- 星空ガイド 天体の基礎知識 星雲・星団・銀河
- 星ナビ.com こだわり天文書評: 「ハッブル宇宙望遠鏡でたどる 果てしない宇宙の旅~3D立体写真館(3)」
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