巨大銀河団「Abell 1689」の重力レンズ現象

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【2013年9月24日 ESA/Hubble

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた巨大銀河団「Abell 1689」の画像が公開された。銀河団に含まれる質量により向こう側の天体像がゆがむ「重力レンズ現象」が鮮明にとらえられている。


ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた銀河団Abell 1689

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた銀河団Abell 1689。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA), J. Blakeslee (NRC Herzberg Astrophysics Program, Dominion Astrophysical Observatory), and H. Ford (JHU))

おとめ座の方向約24億光年彼方の銀河団「Abell 1689」は、そこに含まれる大質量によって生じる強い重力が光を曲げるレンズのような役割を果たしており、銀河団の向こう側に存在する天体の姿を拡大・変形して見せている。この「重力レンズ現象」を利用すると、ひじょうに遠くの領域を詳しく調べることができる。

2002年にも同銀河団を観測したハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、掃天観測用高性能カメラ(ACS)で撮影した可視光線と赤外線データとを合わせた最新画像(総露出時間:34時間以上)から、同領域のようすがこれまでになく詳細に明らかになった。

金色に輝く星の集まりや明るい個々の星、遠方の渦巻銀河などがあちこちに見え、エレクトリック・ブルーの筋が画像中央の銀河たちを取り囲んだり、弧を描いたりしているようすも見える。この筋は、Abell 1689の大質量が起こす「重力レンズ現象」によって、銀河団よりさらに遠方に存在する天体の像がゆがんで見えているものだ。

Abell 1689の重力レンズ効果はこれまでにもさまざまな研究がされている。2010年には銀河団の質量分布図が作成され、本来はひじょうにとらえにくいダークマターやダークエネルギーについて調べられた。また2008年には、それまででもっとも幼く明るい部類の銀河「A1689-zD1」が見つかっている。

こうした重力レンズを利用した遠方宇宙の観測は、ほかの多くの銀河団を対象としても計画されている。

なお、今回の観測研究の主目的は銀河団内の球状星団について調べることであり、Abell 1689全体に含まれる球状星団の総数が16万個以上にのぼる可能性があることもわかった。天の川銀河にある球状星団が約150個ということを考えるととてつもない数字であり、これまで見つかっている中ではもっとも多くの球状星団をかかえる銀河団ということになる。