探査機「カッシーニ」初ダイブ成功
土星探査機「カッシーニ」は先月末から、13年にわたる探査の最後を飾る「グランドフィナーレ」ミッションを開始した。このミッションでカッシーニは、土星の本体と環の間に広がる幅約2000kmの空間を通り抜けるダイブのような飛行を22回行う予定で、4月26日(日本時間、以下同)にその1回目が実施された。
1回目のダイブでは、カッシーニは土星の雲頂から約3000km以内、目に見える環の最も内側の端からは約300km以内を通った。モデルによれば、この隙間領域に環の粒子が存在するとしても、煙の粒子ほどのとても小さいものであることが示唆されていた。とはいえ、カッシーニは時速約12万4000km(土星に対する相対速度)でこの空間を飛び抜けたので、小さな粒子であっても探査機に損傷を与える可能性もあった。
そこでカッシーニは幅4mの高利得アンテナを粒子の方向へ向け、探査機を保護した。そのため、探査機は環を飛び抜け切るまで地球とのコンタクトが取れない状態にあった。環を通過してから約20時間後の4月27日15時56分に通信が復帰し、16時01分に観測データの送信が始まった。
「土星にこれほど接近した探査機はありません。カッシーニが計画通りにダイブを行って、反対側から最良の状態で出てくることができたことを非常にうれしく思います」(カッシーニ・プロジェクトマネージャー Earl Maizeさん)。
地球へ送信されてきた未加工画像には、これまでで最も土星に近いところからとらえられた大気中の渦のような模様や、乱流のようなものが鮮明に写し出されている。
史上最接近距離から撮影された土星の大気。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)
初ダイブでは予想外のデータも得られている。カッシーニが通過した土星本体と環の間の領域には、塵がほとんど存在しなかったのだ。
過去にカッシーニが土星のメインリングのすぐ外側を飛行した際、電波プラズマ波観測器は毎秒数百個の粒子の衝突を検出していた。しかし今回は、わずか数個の衝突が検出されるにとどまっており、直径約1μm以上のものはなかったことが示唆されている。運用チームでは現在、塵の観測に適した計画作りに取り掛かっている。
カッシーニの2回目のダイブは5月3日4時38分で、初回とほぼ同じ領域を通過する予定だ。今後も週に一度ほどのペースでダイブを繰り返し、9月15日に土星大気へと突入してミッションを終了する。
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