極寒の夜を越えて再び目覚めたSLIM

このエントリーをはてなブックマークに追加
2月1日から休眠に入っていた月着陸実証機「SLIM」が、25日に地上から送られたコマンドに応答し、極低温の月面の夜に耐えて通信を再開した。越夜後に航法カメラがとらえた鮮明な画像も公開された。

【2024年2月28日 JAXA(1)(2)

1月20日、JAXAの月着陸実証機「SLIM」は日本初の月面軟着陸に成功した。着陸時の姿勢が原因で太陽電池パネルによる発電はすぐにはできなかったものの、約1週間後にパネルに太陽光が射しはじめ、1月28日に発電を開始した。その後、SLIMは1月31日まで活動して休眠に入った

月の自転周期は約27日なので、2月中旬ごろには再び着陸地点の夜が明けて、SLIMに太陽光が当たるようになる。そこでSLIMの運用チームは、運用再開に向けて準備を進めてきた。ただし、月の昼の温度は摂氏110度、夜は摂氏マイナス170度にもなり、SLIMはこうした温度に耐えられるようには設計されていなかったことから、再びSLIMを運用できるかどうかは不明であった。

2月25日の夜、運用チームがSLIMにコマンドを送信したところ応答があり、通信機能が維持されていることが確認された。SLIMは約2週間に及ぶ極寒の夜を見事に乗り切ったのだ。この通信のタイミングでは一部の機器の温度が100度を超える高温となっていたため、その日は短時間の運用で終了された。

SLIMからの応答を示す通信画面
SLIMからの応答を示す2月25日の通信画面(提供:JAXA

越夜後の運用が再開されると、SLIMは航法カメラを使った撮影を実施し、遠方のクレーターなどがはっきり見える画像の取得に成功した。

越夜後の運用でSLIMの航法カメラがとらえた画像
越夜後の運用でSLIMの航法カメラがとらえた画像。遠方の特徴的な十字に並ぶクレーターなどがはっきり見えている(提供:JAXA

また、SLIMに搭載されている「マルチバンド分光カメラ(Multi-Band Camera:MBC)」のチームは、前回の撮影で見えていなかった部分を撮像する新たなコマンドの作成を終えており、その撮像結果が待たれるところだ。

前回取得されたマルチバンド分光カメラの画像
前回の運用で取得されたマルチバンド分光カメラの画像。見えていない4か所(赤い四角内)を撮影する新たなコマンドが作成された(提供:JAXA

運用チームは今後、機器の温度に注意を払いながら慎重な検討を行ってSLIMの運用を進めていく。