極寒の夜を越えて再び目覚めたSLIM
1月20日、JAXAの月着陸実証機「SLIM」は日本初の月面軟着陸に成功した。着陸時の姿勢が原因で太陽電池パネルによる発電はすぐにはできなかったものの、約1週間後にパネルに太陽光が射しはじめ、1月28日に発電を開始した。その後、SLIMは1月31日まで活動して休眠に入った。
月の自転周期は約27日なので、2月中旬ごろには再び着陸地点の夜が明けて、SLIMに太陽光が当たるようになる。そこでSLIMの運用チームは、運用再開に向けて準備を進めてきた。ただし、月の昼の温度は摂氏110度、夜は摂氏マイナス170度にもなり、SLIMはこうした温度に耐えられるようには設計されていなかったことから、再びSLIMを運用できるかどうかは不明であった。
2月25日の夜、運用チームがSLIMにコマンドを送信したところ応答があり、通信機能が維持されていることが確認された。SLIMは約2週間に及ぶ極寒の夜を見事に乗り切ったのだ。この通信のタイミングでは一部の機器の温度が100度を超える高温となっていたため、その日は短時間の運用で終了された。
越夜後の運用が再開されると、SLIMは航法カメラを使った撮影を実施し、遠方のクレーターなどがはっきり見える画像の取得に成功した。
また、SLIMに搭載されている「マルチバンド分光カメラ(Multi-Band Camera:MBC)」のチームは、前回の撮影で見えていなかった部分を撮像する新たなコマンドの作成を終えており、その撮像結果が待たれるところだ。
運用チームは今後、機器の温度に注意を払いながら慎重な検討を行ってSLIMの運用を進めていく。
〈参照〉
- 小型月着陸実証機SLIM X:
- 航法カメラから画像をダウンロードしました。遠方のクレーターなどがはっきり見えます(2月28日午前11時51分)
- MBCチームは前回見えなかった赤枠内を撮像する新たなコマンドを作りました(2月26日午後9時40分)
- SLIM越夜後運用にて、航法カメラでの撮像を実施しました!(2月26日午後9時38分)
- 通信を続けるともっと熱くなっちゃうから、昨日はちょっとだけ通信してまたお休みすることにしたんだ(2月26日午後1時46分)
- 昨晩地球と通信したとき、一部の機器の温度は最初から100℃を超えていたよ。それでも動作するなんて宇宙用の電子機器はすごいね!(2月26日午後1時46分)
- 昨晩、コマンドを送信したところSLIMから応答がありました。SLIMは通信機能を維持しての月面での越夜に成功しました!(2月26日午後1時36分)
〈関連リンク〉
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