SLIM、岩石などを観測し休眠

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1月28日に月着陸実証機「SLIM」の太陽光発電が回復し、地上との通信が確立された。復活したSLIMは周囲の岩石やレゴリスを観測し、完了後に再び休眠に入った。

【2024年2月5日 JAXA宇宙科学研究所

月着陸実証機「SLIM」は1月20日に月面着陸に成功し、大きい重力のある天体へのピンポイント着陸という、世界初の技術を確立した。

しかし、月面への下降時にメインエンジンのノズル1つを失った影響で、事前の想定とは異なる、逆立ちのような姿勢で着陸した。そのため、着陸時には太陽光が太陽電池パネルに当たらず、発電ができない状態だった。それでも、月面では2週間ごとに夜と昼が繰り返されていることから、1月末ごろには西を向いてしまった電池パネルに太陽光が当たる可能性があるとして、運用チームではSLIMの復旧運用に向けて全力を注いできた。

28日の夜、SLIMの太陽電池パネルに太陽光が当たると発電が始まり、一度電源が切られていたSLIMが自動的に起動した。地上との通信の確立後、SLIMは搭載するマルチバンド分光カメラ(MBC)を用いて最初の観測画像を取得した。さらに30日から31日にかけては、探査対象である岩石などのマルチバンド観測も実施した。計画当初に予定されていた10バンド分光観測は順調に終了し、13か所の岩石やレゴリスといった期待以上に多くの対象に対して高解像度観測が行われた。これらのデータをもとに、岩石の判別と鉱物の化学組成の推定が進められる。

月面のモザイク画像
MBCによる着陸直後の月面スキャン撮像モザイク画像(左)と、電力回復直後のモザイク画像(右)。太陽の方向が東から西に変わったため、左右の画像で影のつき方が異なっている(提供:JAXA、立命館大学、会津大学)

10個の岩石と、そのうちの一つ「あきたいぬ」
(左)10バンド観測が行われた岩石。(右)近赤外線観測された岩石「あきたいぬ」。MBCのオートフォーカス機能を使って「あきたいぬ」までの距離が18mと測定され、岩石の大きさも計算された(提供:JAXA、立命館大学、会津大学)

31日の運用後、SLIMは再び休眠に入った。2月中旬ごろには着陸地点の夜が明け再び太陽光が当たるようになるので、運用チームはそのころに運用再開に挑むという。

なお、SLIMのピンポイント着陸にあたっては多くの国の探査機との国際協力が行われた。インドのチャンドラヤーン2号からは高分解能観測データが提供され、着陸点の最終選定に利用された。また、NASAのルナー・リコナサンス・オービター(LRO)は上空から着陸後のSLIMをとらえ、その画像から、SLIMが着陸目標点から約57mほどしか離れていない地点で静止したとみられることが確認された。

LROが上空からとらえたSLIM
LROが上空からとらえたSLIM(白矢印の先)と着陸目標点(赤矢印)。画像クリックで拡大表示(提供:NASA/Goddard/Arizona State University)